■ ヘッドホン・イヤホン測定系 使用機材と構成(2017年2月~)
[音圧周波数特性 測定系]
音圧特性はARTA SoftwareのSTEPSというソフトを使用します。 マルチメーターで電圧を測定し,1mW相当の入力(1kHz)になるようにヘッドホンアンプのボリュームを調整します。
使用したヘッドホンアンプGRACE DESIGN m902の出力インピーダンスは約1.23Ωです。
なおBluetoothヘッドホンを測定するときには,Sennheiser BTD 800 USBというUSBタイプのBluetoothアダプタを用い, ここからダイレクトにヘッドホンに測定信号を送信します。 このアダプタはaptXにも対応しているので,対応ヘッドホンはaptXでの測定となります。
測定用のマイクには定評のあるPanasonic WM-61Aを使用します。 データシート上の平坦な帯域は20Hz-16,000Hzですが,20,000Hzくらいまでの音圧も拾っています(平坦かどうかはわかりませんが)。 ヘッドホン測定用マイク治具をFig.2に示します。
このマイクは通常はプラグインパワー方式で使いますが,今回はこのマイクをファンタム電源で使用できるように改造および回路の追加を行ったものを使用しました。 これは「ShinさんのPA工作室」で製作されている「ファンタム式パナ改マイク fetII」というマイクからマイクカプセルを取り外し, WM-61Aを裸の状態のままにしたものをカスタムで製作していただいたものです(Shinさん,有り難うございました)。 これを自作治具に取り付けました。 お陰様で測定系全体をシンプルにし,信頼性を上げることが出来ました。
この治具をテーブルの端に設置し,Fig.3のように治具とテーブルとを挟み込むようにヘッドホンを装着し,片方ずつ測定します。
本来であれば,IEC規格に沿った人工耳やカプラーを使うのが望ましいのですが,個人で入手できるようなものではありませんので, ヘッドホンの場合はFig.4のような簡易的にIEC60318-1規格の人工耳に似せたアダプター(カプラー)を使って測定しています。
アダプターは,『のりパネ』という厚さ7mmの発泡スチロールボードを加工して作成しています。
次にカナル型イヤホンの測定治具をFig.7に示します。
内径7mmのシリコンチューブを使っています。マイクの先端からチューブの端までの長さを24mmにしています。 このシリコンチューブにカナル型イヤホンのイヤーチップの先端をFig.7のように挿入して測定します。
<参考記事>
好録音探求: ヘッドホン測定治具の製作 (2014/01/11)
好録音探求: ヘッドホンの測定で人工耳アダプターを製作して試す (2014/01/20)
好録音探求: カナル型イヤホンの特性測定を試みる (2014/02/08)
好録音探求: ヘッドホンの測定で使用する人工耳アダプターを改良しました (2015/01/28)
[インピーダンス特性測定系]
インピーダンス特性はARTA SoftwareのLIMPというソフトを使用します。 100Ωの抵抗を直列に接続し,その両端の電圧が測れるようにオーディオI/FのLINE INに入力します。
<参考記事>
好録音探求: ARTA Softwareを使ったヘッドホンのインピーダンス特性の測定 (2014/01/26)
[ノイズ・キャンセリング性能 測定系]
ノイズキャンセリング性能の測定は,ARTA SoftwareのARTAというソフトのスペクトル分析機能を使用します。 まずスピーカでノイズ信号(ピンクノイズ)を再生してノイズ環境をつくります。 そして次の写真の測定治具を用い,治具に仕込んだマイク(Panasonic WM-62CU)で拾ったノイズの量をスペクトル分析します。
実際にヘッドホンを装着すると次の写真のようになります。
測定は以下の4パターン行います。
(1) ノイズを止めた状態でヘッドホンを装着せず測定(ノイズフロアを確認)
(2) ノイズ発生を発生させヘッドホンを装着せず測定(ノイズ量を測定)
(3) ヘッドホンを装着しノイズキャンセリング機能オフで測定(遮音性能を測定)
(4) さらにノイズキャンセリング機能オンで測定(アクティブ性能を測定)
得られたデータから,(3)-(2)で遮音性能を,(4)-(3)でアクティブキャンセル性能を,(4)-(2)でトータルのノイズキャンセル性能を,それぞれ算出してグラフ表示します。
なお,ノイズキャンセリングヘッドホンの測定方法は,JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)の規格「RC-8142 ノイズキャンセル型ヘッドホン及びイヤホン」でその測定方法が規定されています(→JEITA規格書のページ)。 素人にはここに記載されているとおりの測定は困難なので,可能な範囲でということで上記のような方法を採っています。
<参考記事>
好録音探求: ノイズキャンセリングヘッドホンの性能測定を試みる (2017/02/08)