【ディスク一覧】

演奏団体 レーベル 収録曲 収録年 演奏 好録音度 備考
アルバン・ベルク四重奏団EMI全集1978-1983★★★★
アルカン四重奏団ATMA全集2007-2012★★★★分売(前/中/後)
アルティ弦楽四重奏団EXTONOp.131, 1352013★★★★
アルティ弦楽四重奏団EXTONOp.1322015★★★☆
アマデウス四重奏団Deutsche Grammophon全集1959-1963★★★★
アルテミス四重奏団Virgin Classics全集1998-2011★★★★☆
アウリン四重奏団TACET全集2002-2004★★★★分売(Vol.1~4)
バルトーク四重奏団Hungaroton全集1969-1972★★★★☆
ベルチャ四重奏団Zig-Zag Territoires全集2011-2012★★★★☆分売(Vol.1-2)
ベルチャ四重奏団EuroArts全集2012★★★★Blu-ray Disc
ブレンターノ弦楽四重奏団aeonOp.127, 1312010★★★★
ブダペスト弦楽四重奏団Sony Classical全集1958-1961★★★★☆
カメラータ・ノルディカAltara Music後期2001-2005★★★★弦楽合奏版
カルミナ四重奏団DENONOp.59-3,1321998★★★★
愛聴盤クリーヴランド四重奏団TELARC全集1991-1995★★★★☆
コロラド弦楽四重奏団Parnassus全集2001-2009★★★★★
サイプレス弦楽四重奏団AVIE全集2009-2015★★★★分売(前/中/後)
エディング四重奏団OUTHEREOp.130,133不明★★★★☆
エリアス弦楽四重奏団Wigmore HallOp.18-4, 74, 130, 1332014★★★★
クァルテット・エクセルシオLIVE NOTESOp.592014★★★★
クァルテット・エクセルシオLIVE NOTESOp.127, 1352014★★★★
エマーソン弦楽四重奏団Deutsche Grammophon全集1994-1995★★★★☆
エンデリオン弦楽四重奏団Warner Classics全集2005-2008★★★★
ファイン・アーツ四重奏団Everest全集1959-1966★★★★分売(前/中/後)
ゴールドナー弦楽四重奏団ABC Classics全集2004★★★☆
ハーゲン四重奏団myrios classics選集2010-2012★★★★☆分売
ジャスパー弦楽四重奏団Sono LuminusOp.131不明★★★★
ケッケルト弦楽四重奏団Deutsche Grammophon全集1953-1956★★★★
レナー弦楽四重奏団東芝EMI全集1926-1938評価せずSP復刻盤分売(前/中/後)
ライプツィヒ弦楽四重奏団MDG全集1995-2006★★★★分売(9枚)
メロス四重奏団Deutsche Grammophon全集1983-1986★★★★
ミケランジェロ弦楽四重奏団PANCLASSICSOp.18-1, 22007★★★★
ミネッティ四重奏団hänsslerOp.18-2,4, Op.952013★★★★☆
ミロ・クァルテットVanguad/LonghornOp.18, Op.592004,2012★★★★☆
ニュー・ミュージック弦楽四重奏団Bartók RecordsOp.14-1, Op.59-31950年代★★★
愛聴盤ジュリアード四重奏団Sony Classical全集1964-1970★★★★☆
愛聴盤ジュリアード四重奏団Sony Classical全集1982★★★★☆分売(前/中/後)
愛聴盤ジュリアード四重奏団TESTAMENTOp.1311960★★★★★
愛聴盤オライオン弦楽四重奏団KOCH全集2006-2008★★★★★分売(前/中/後)
ペーターセン四重奏団CAPRICCIO選集10曲1994-2002★★★★分売
フィルハーモニア・クァルテット・ベルリンThorofon全集不明★★★★
上海クァルテットCAMERATA TOKYO全集2005-2009★★★★分売
シネ・ノミネ四重奏団Claves RecordsOp.59,74,952004,05★★★★
愛聴盤ズスケ四重奏団Berlin Classics全集1967-1980★★★★☆
タカーチ四重奏団DECCA全集2001-2004★★★★☆
ターリヒ四重奏団Calliope/La Dolce Volta全集1977-1982★★★★★
ヴァンブルー四重奏団Intim Musik全集1996★★★★
フェルメール四重奏団Warner Classics全集1983-1991★★★★
ヴィルトゥオーゾ・カルテットMeister MusicOp.132, 1332013★★★
ヴォーチェス四重奏団ELECTRECORD全集1998★★★☆
ウィーン・ムジークフェライン四重奏団Gakken Platz全集1990-1992★★★☆
ウィハン四重奏団Lotos全集1996-2005★★★★
ウィハン四重奏団Nimbus Alliance全集2007-2008★★★★
イェール弦楽四重奏団Vanguard Classics後期1968, 1971★★★★☆分売
イザイ四重奏団YSAŸE RECORDSOp.18-3, 74, 1352008★★★☆
愛聴盤古典四重奏団ewe records後期1999-2000★★★★☆分売(4枚)

※ 演奏評はフェイスアイコンの<演奏>表に準じます(正直アバウトです(^^;)。
※ 録音評は好録音探求に合わせて★マークとします。評価がばらつく場合は最も良い評価を載せています。
CD試聴記としては統一性がありませんが,ご了承ください。

【試聴記】

■ エディング四重奏団 Edding Quartet

レーベルOUTHERE
収録曲Op.130, Op.133
録音不明
所有盤LPH 023 (P)(C)2016 OUTHERE (輸入盤)
備考演奏 録音(★★★★☆)
Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

Apple Musicでの試聴です。

エディング四重奏団は,古楽オーケストラのシャンゼリゼ管弦楽団のトップ奏者で構成され,ピリオド楽器を使って演奏されているとのことです。終楽章は大フーガに置き換えられています。とても軽やかでスピード感がありキレの良い演奏を聴かせてくれます。アンサンブルも優秀です。特に混沌としがちな大フーガをサラッと弾いていてこんなに聴きやすい演奏はそんなにないと思います。ピリオド楽器であることがあまり意識されないのも良い点です。この演奏で他の曲も聴いてみたいです。

さて肝心の録音ですが,やや残響が多めで楽器音へのまとわりつきが気になりますが,楽器音自体は比較的近い距離で録られているのか,ニュアンスが十分に伝わってきて,これならまだ許せると思いました。もっと残響を抑えてクリアに録って欲しいのは言うまでもありませんが。

なお,カップリングとしてNorthernlightの演奏によるピアノと管楽器のための五重奏曲変ホ長調作品16が収録されています。

(記2017/01/08)

■ シネ・ノミネ四重奏団 Quatuor Sine Nomine

レーベルClaves Records
収録曲Op.59, Op.74, Op.95
録音Salle de Chatonneyre in Corseaux/Vevey (Switzerland), 19-22 December 2004, 27-30 June 2005
所有盤CD 50-2509/10 (P)(C)2005 Claves Records (輸入盤)
備考演奏 録音(★★★★)
Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

シネ・ノミネ四重奏団は1975年の結成ということです。少なくとも2013年の録音がありますので,40年近く活動されているベテランの四重奏団です。これは2005年頃の録音ですので結成30年くらいでしょうか。キャリアの割に録音が少ないのが残念ですが,シューベルトの弦楽四重奏曲全集などの名盤を残していますね。

さてこのベートーヴェンですが,全体に速めで淀みのないテンポ設定で颯爽としており,かつ,エモーショナルな演奏です。完成度を求めるよりもノリを重視しているようにも思います。ベートーヴェンの録音というと構えた演奏が多いように思いますが,これは随分と自由闊達な印象を受けます。長いキャリアが生んだスタイルなのかもしれません。

録音ですが,少し残響感はありますが,それでも比較的明瞭に録られていて聴きやすい録音です。楽器の質感は少し弱めでちょっと中途半端な印象があり,もう少しクリアに録って欲しかったところですが,まあこれでも問題ありません。

この中期の弦楽四重奏曲集,セリオーソまでの5曲が2枚に収まっています。考えてみるとほかにはあまりないように思います。

(記2016/07/31)

■ ジャスパー弦楽四重奏団 Jasper String Quartet

レーベルSono Luminus
収録曲Op.131
録音不明
所有盤(P)2014 Sono Luminu
備考演奏 録音(★★★★)
Apple MusicAmazon.co.jp(MP3)公式Webサイト

ジャスパー弦楽四重奏団は2006年に米国オハイオ州のオバーリン音楽院で結成された四重奏団で,2008年頃には東京クヮルテットの指導も受けたことがあるようです。Sae Chonabayashiさんという日本人の方が第2ヴァイオリンで参加されています。この録音の前に2枚のディスクをリリースされています。この録音はディスクで発売されているのかどうかはわかりませんでした。Apple Musicでの試聴です。

基本的には奇を衒わないオーソドックスな演奏ですが,気負いのない軽めの表現が明るく爽やかです。アンサンブルも良く技術的にも安定感があります。もう少し個々の奏者の音色に魅力があればとも思いますが,神経の行き届いた細やかさと控え目ながらも情緒的なニュアンスがそれを補ってくれています。

録音ですが,残響は控え目に抑えられているものの,少し距離感があってそれぞれの楽器に薄いベールがかかったような感じに聴こえます。楽器の質感やニュアンスは辛うじて感じられ,音色の曇りも最小限なので十分許容範囲なのですが,もう少しすっきり,くっきり録ってくれていたらなぁと思います。惜しいです。

後期の四重奏曲のこういう演奏はあまりないように思いますので,今後の録音にも注目していきたいですね。

(記2016/06/19)

■ クァルテット・エクセルシオ Quartet Excelsior

レーベルLIVE NOTES
収録曲Op.59
録音2014年12月25-26日 神奈川・相模湖交流センター
所有盤WWCC-7807-8 (P)2016 Nami Records (国内盤)
備考演奏 録音(★★★★)
Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

2014年にリリースされた第12番,第16番に続く第2弾となります。録音自体は前作から約半年後の2014年12月。基本的には前作と同じで正統的なスタイルが踏襲されており,優れたアンサンブルと細やかに表現が行き届き,完成度高く仕上げています。やはり個性的な表現は追い求めず,あくまでオーソドックスな範囲でニュアンスの豊かさで勝負しているように聴こえます。これはこれで私は良いと思いますし,この路線で全曲録音を続けて欲しいというのも変わりません。

ただ,前作でも残念だった録音は今回も同じであり,残響が音色を濁しており,また,ニュアンスや質感を聴き取りにくくしているのは少々残念です。この残響の取り入れ方は音楽的にもほとんど貢献していませんので,もっとクリアにヌケ良く録ることを優先して欲しいところです。目くじらを立てるほど悪くはないのですが,せっかくの好演奏をもっと良い状態で楽しみたいということで,あえて言わせていただいております。

(記2016/06/12)

■ サイプレス弦楽四重奏団 Cypress String Quartet

(1)ベートーヴェン:初期弦楽四重奏曲集
レーベルAVIE
収録曲Op.18
録音2015年8月19日~9月6日
所有盤AV2348 (P)(C)2016 Cypress String Quartet (輸入盤)
備考演奏 録音(★★★★)
Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
(2)ベートーヴェン:中期弦楽四重奏曲集
レーベルAVIE
収録曲Op.59, Op.74, Op.95
録音2012-2014年
所有盤AV2418 (P)(C)2014 Cypress String Quartet (輸入盤)
備考演奏 録音(★★★★)
Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
(3)ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集
レーベル自主制作?
収録曲Op.127, Op.130, Op.131, Op.132, Op.133, Op.135
録音不明(2009-12年?)
所有盤CSQBC012 (C)2012 Cypress Performing Arts Association (輸入盤)
備考演奏 録音(★★★★)
Amazon.co.jp

サイプレス弦楽四重奏団は1996年に米サンフランシスコで結成されたとのこと。アンサンブルもしっかりした堅実な演奏を聴かせてくれます。オーソドックスですが,ここぞというところでしっかりと盛り上げる,ツボもきちんと押さえています。実力のある団体だと思いました。

今まで中期,後期が先行して発売されていましたが,この2016年5月に前期が発売になり,全集として完成したことになります。また,後期はほとんどプライベート盤的なリリースであったものが,Avieレーベルから発売となり,めでたく同一レーベルで揃ったことになります。

録音ですが,前期,中期,後期で少し差があるものの,統一感のある録音です。残響は少なめですが,残響までにならない,部屋の反響音が若干多めで音色はくすみ気味です。生録的な自然な雰囲気の録音で基本的にはこのような録音は好きなのですが,もう少し反響音を抑えて透明感のある音で録って欲しかったですね。少し残念です。

なお,以前にも報告しましたが(→こちらをご参照ください),最初に入手したものは中期のDISC 3,Track 6の4:22あたりでノイズが入り,返品交換してもらったものも同様にノイズが入るということで諦めかけたのですが,公式Webサイトから四重奏団に直接問い合わせたところ,作り直した正常なディスクを送ってもらうことができ,一件落着したということがありました。もし入手されたディスクに同様な欠陥があった場合は,直接問い合わせてみるという手段もありますので,ここに紹介しておきます。

(追記2016/05/29)
(記2015/03/08)

■ アルカン四重奏団 Quatuor Alcan

(1)ベートーヴェン:初期弦楽四重奏曲集
レーベルATMA
収録曲Op.18
録音2007-2010年 カナダ,ケベック
所有盤ACD2 2491 (P)2007-2010 (C)2014 Disques ATMA inc. (輸入盤)
備考演奏 録音(★★★★)
Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
(2)ベートーヴェン:中期弦楽四重奏曲集
レーベルATMA
収録曲Op.59, Op.74, Op.95
録音2008-2011年 カナダ,ケベック
所有盤ACD2 2492 (P)2008-2011 (C)2015 Disques ATMA inc. (輸入盤)
備考演奏 録音(★★★★)
Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
(3)ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集
レーベルATMA
収録曲Op.127, Op.130, Op.131, Op.132, Op.133, Op.135
録音2007-2012年 カナダ,ケベック
所有盤ACD2 2493 (P)2015 Disques ATMA inc. (輸入盤)
備考演奏 録音(★★★★)
Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

アルカン四重奏団はカナダの団体,1989年の結成で,2014年に結成25周年,これに合わせて全集を録音されました。初期・中期と順次発売され,この度後期が発売されて全集として揃いました。以前に一度初期・中期を取り上げていましたが,改めて取り上げます。

とても良くバランスの取れた演奏をする団体です。表現は至ってオーソドックス。技術力もありますしアンサンブルもとても良く安定感があります。あまりに素直で強い主張がないために少し印象が薄いのですが,曲に対する誠実さを感じる良い演奏であることは間違いありません。特に後期は策を弄せずよりシンプルですっきりと表現されていてかえってこれが良い効果を生んでいます。地味ですが良い全集が出来上がったなと思います。

録音ですが,数年にわたって少しずつ録音されていてばらつきがあります。一部の録音は残響が適度に抑えられてすっきりと聴きやすいのですが,残響が多めで癖のある響きが被って明瞭感と音色に影響し高域のヌケが今ひとつでスカッと気持ちよく聴くことが出来ないものもあります。それほど悪い録音ではないのですが,良い方の録音に統一されていれば良かったのにと少し惜しく思います。

(記2015/09/23)

■ アルティ弦楽四重奏団 ALTI String Quartet

レーベルEXTON
収録曲Op.132
録音2015年3月25-27日 水戸芸術館 コンサートホールATM
所有盤OVCL-00575 (P)(C)2015 Octavia Records (国内盤)
備考演奏 録音(★★★☆)
Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

京都府立府民ホール“アルティ”の開館10周年を記念して1998年に結成された,豊嶋泰嗣,矢部達哉,川本嘉子,上村昇,という錚々たるメンバーの弦楽四重奏団。すでに第1弾としてベートーヴェンの第14番,第16番のディスクをリリースしており,これが第2弾となります。

基本的に第1弾から変わらず,オーソドックスで堂々とした演奏ながら,奥ゆかしさというか,慎ましさというか,日本人の美徳が感じられ,それがこの曲によくマッチしています。技術的にも安定していますし,アンサンブルも申し分ありません。強い主張がないところが好き嫌いの分かれるところだと思いますが,私は好きです。昨今こういう演奏はあまり多くないと思いますし。この調子で残りの曲も録音して欲しいですね。

さて録音ですが,前回と同じくホールの響きのキャラクターに支配され,演出色が強いです。やはり残響の取り入れ方が半端で,心地よい響きに至らず,音色を濁し明瞭感,質感を損なってしまっています。やはり今回もせっかくの素晴らしい演奏をまったく活かさない録音でとても残念です。

ところで,やはり今回もアルティでの録音ではないですね...(^^;。

(記2015/09/12)

■ フィルハーモニア・クァルテット・ベルリン Philharmonia Quartett Berlin

レーベルThorofon
収録曲全集
録音データなし
所有盤CTH2614 Thorofon (2015年発売) (輸入盤)
備考演奏 録音(★★★★),(★★★☆)(Op.95, Op.127, Op.130, Op.133)
Tower RecordsHMV Onlineicon

フィルハーモニア・クァルテット・ベルリンは,ベルリンフィルの首席奏者によって1984年に結成された団体とのことで,メンバーチェンジを繰り返しながら今に至り,日本にも10回以上来日しているとのことです。

録音データが全く記載されていないのですが,公式Webサイトのディスコグラフィを見ると,1994年にOp.95/Op.127,2000年にOp.130/Op.133,2004年にOp.131/Op.135,だいぶ飛んで,2013年にOp.18,2014年にOp.59/Op.74をそれぞれリリースしており(Op.132は不明),この全集はそれら20年にわたる録音の集大成ではないかと思われます。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲というと,昨今は切れ味の鋭くソリッドに演奏がされる傾向が強いと感じているのですが,ここでは卓越した技術に支えられているのはもちろんですが,活気がありながらもその技術的余裕を活かしてむしろユルくネアカのベートーヴェンに仕立てているように思います(「ユルく」というのは誤解を生みそうですが(^^;)。あとの録音になるほどその傾向が強くなっているのは団体としての成熟度を反映しているのかもしれません。これはなかなかに素晴らしい全集だと思います。

録音ですが,2000年頃までにリリースされているOp.95, Op.127, Op.130, Op.133と,それ以降の録音で差があり,前者は残響過多で音色がくすみ,明瞭感も良くなく,精彩のない音質です。一方後者は残響は多いものの,直接音成分が比較的多いため,残響の影響を受けながらも楽器の質感も感じ取りやすく,音の伸びもあってまずまずです。中ではラズモフスキー第1番が最も良好です。せめてこれくらいの録音で統一されていたら良かったのですが。

(記2015/08/10)

■ ミネッティ四重奏団 Minetti Quartett

レーベルhänssler CLASSIC
収録曲Op.18-2, Op.18-4, Op.95
録音29-30 April 2013, 1-2 May 2013, Hofmusikkapelle, Wien
所有盤CD 98.029 (P)(C)2014 hänssler CLASSIC (輸入盤)
備考演奏 録音(★★★★☆)
Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

ミネッティ・クァルテットは2003年に結成された若手の四重奏団。2006年のグラーツのフランツ・シューベルト国際弦楽四重奏コンクール最高位などの受賞歴があるとのことです。

これは現代的でスマートで洗練された演奏ですね。勢いのある演奏なのに全く乱れたり荒れたりせずキレの良い完璧なアンサンブルで音楽が見通しよく整理されています。個々の奏者の音色が美しく魅力的で(特に1stヴァイオリンが際立っています),優れたアンサンブルと相まって雑味のない透明な響きを生み出しています。これは出色の出来です。素晴らしいです。

録音ですが,残響(響き)を少し取り入れていてまとわりつきと音色への影響が気になるものの,個々の奏者のニュアンスや楽器の質感を伝えてくれるもので,見通し,分離感もまずまずです。もう少し響きを抑えて欲しかったとは思いますが,これでも十分良好な録音と言えます。

演奏も録音も良い素晴らしいディスクでした。今後の録音にも大いに期待します。

(記2015/05/03)

■ エリアス弦楽四重奏団 Elias String Quartet

レーベルWigmore Hall
収録曲Op.18-4, Op.74, Op.130, Op.133
録音Recorded live at Wigmore Hall, London, on 20 February 2014
所有盤WHLive0073/2 (P)(C)2015 The Wigmore Hall Trust (輸入盤)
備考演奏 録音(★★★★)
Amazon.co.jp

ふふふ...今時こんなコテコテの演奏をする弦楽四重奏団があったとは。嬉しくなりますねぇ。1stヴァイオリンが全体を引っ張るスタイルで,とにかくこの1stヴァイオリンが臭ってきそうなくらい強烈な個性を発しているのです。技術的にも上手いですしアンサンブルも良いです。いやー,とにかく面白い。好きかどうかは別にしてこんなベートーヴェンは滅多に聴けないので本当に楽しめます。大フーガが終わった後の観衆の熱狂的な拍手,かけ声も納得です。私もずっとニヤニヤしながら聴きました(^^;。全集の第1弾ということですので,今後の続編が楽しみです。

録音ですが,ライヴ録音で残響感とホールの雰囲気を感じさせる反響があるために音色は少し影響を受けているのですが,本来の伸びはないものの刺激的なくらいに高域はあるので質感はかなり保たれています。くすんだ感じもありません。もう少しすっきりと透明感のある音で質感豊に録って欲しいところですが,許容範囲内に入ります。

なお,第13番は終楽章が大フーガのバージョンで弾いています。

(記2015/03/10)

■ ベルチャ四重奏団 Belcea Quartet

レーベルEuroArts
収録曲全集
録音2012年 ウィーン・コンツェルトハウス
所有盤EuroArts 2072664 (輸入盤) ※Blu-ray Disc 4枚組
備考演奏 録音(★★★★)
Tower RecordsHMV Onlineicon

ベルチャ四重奏団は2011年から2012年にかけてセッションで全集を録音していますが,これはそれを受けて行われた全曲演奏会のライヴ収録ビデオです。第13番は大フーガを終楽章とする演奏と,新たに作曲され差し替えられた終楽章の演奏と,2種類の演奏が収録されています。

セッションと同時期の演奏なので,ほぼ同じ印象を受けるます。ライヴでもこの完成度を保っているのはさすがです。甘さを徹底して排除した極めてキレの良いダイナミックな現代的演奏ですね。

録音はやや多めに残響が取り入れられていますが,ウェットになることなく楽器音をしっかりと捉えています。しかしやや音が硬く伸びがありません。悪くはないのですが,すっきりしない録音です。

映像の方はカメラワークは悪くないと思いますが,ステージが暗く映像も全体に暗く地味です。これは全く好みの問題なのですが,私としてはもう少し明るい映像で録ってくれた方が楽しめたかなと思います。演奏には集中できるかもしれませんが。

(記2014/12/20)

■ クァルテット・エクセルシオ Quartet Excelsior

レーベルLIVE NOTES
収録曲Op.127, Op.135
録音2014年5月14-15日 サン・エール相模原
所有盤WWCC-7771 (P)2014 NAMI RECORDS (国内盤)
備考演奏 録音(★★★★)
Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

これもまた日本人の超真面目さ,美徳がそのまま音楽になったような演奏ですね。まるでお手本。突出した特徴はありません。ですが,とても調和の取れた,バランス感覚に優れた,控えめながらもニュアンス豊か,弦楽四重奏としてとても完成度の高い出来だと思います。アンサンブルも優秀です。弦楽四重奏団としての個性は私にはほとんど感じられませんでしたが,それ自体がこの四重奏団の美点であると思います。

録音ですが,残響感がほとんどないにもかかわらず,音色はややくすみ気味でややすっきり感がなく冴えません。少しオフマイクなのかもしれません。悪くはありませんが,中途半端な感じが否めません。もう一歩楽器に寄ってクリアにヌケ良く録音して欲しいものです。

ベートーヴェンはこの調子で録音を続けて欲しいです。期待しています。でも録音は改善を強く望みます。

(記2014/12/14)

■ イェール弦楽四重奏団 The Yale String Quartet

(1)ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集 Vol.1
レーベルVanguard Classics
収録曲Op.127, Op.130, Op.133
録音Vanguard's 23nd Street Studio, New York City, 1968, 1971
所有盤ATM-CD-1205 (P)(C)2004 Artemis Classics (輸入盤)
備考演奏 録音(★★★★)(Op.127),(★★★★☆)(Op.130, Op.133)
Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
(2)ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集 Vol.2
レーベルVanguard Classics
収録曲Op.131, Op.132, Op.135
録音Vanguard's 23nd Street Studio, New York City, 1968, 1971
所有盤ATM-CD-1206 (P)(C)2004 Artemis Classics (輸入盤)
備考演奏 録音(★★★★)(Op.131, Op.132),(★★★★☆)(Op.135)
Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

第一印象は真面目であまり寄り道しないストイックな演奏なのですが,キレが良くきびきびしていて控えめながらも跳ねるような躍動感もあります。特徴のある演奏ではないかもしれませんが,曲をいじりすぎないストレートなところが功を奏した良い演奏だと思います。アンサンブルも優秀です。

録音ですが,スタジオ録音ということもあって残響感は少なめです。そのため明瞭感はあるのですが,1968年から1970年にかけて録音された第12番,第14番,第15番は音色がやや古く,高域の伸び感も今一歩,音が団子になって分離感もやや物足りません。演奏が地味に聴こえてしまうのはこの録音のせいもあると思います。古いというほどの録音年代ではないので,これは少し残念に思います。1971年に録音された第13番,第16番は高域の伸びと分離感,質感が改善されていて良好です。

この録音では,安芸晶子さんと松田洋子さんが第2ヴァイオリンとして参加されています。第1ヴァイオリンは創生期の日本フィルのコンサートマスターを務めたブローダス・アール,ヴィオラはワルター・トンプラーとのことです。

(記2014/11/24)
COVER PICTURE

ヴィルトゥオーゾ・カルテット [Op.132, Op.133]

Virtuoso Quartetto [Op.132, Op.133]

メンバー 齋藤真知亜(1stVn),大宮臨太郎(2ndVn),店村眞積(Vla),藤森亮一(Vc)
レーベル Meister Music
録音データ Live Recording at Hakuju Hall, Tokyo, 7th November 2013
試聴盤 MM-2178 (P)(C)2014 Meister Music (国内盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★
備考 Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

ヴィルトゥオーゾ・カルテットは,齋藤真知亜(1stVn),大宮臨太郎(2ndVn),店村眞積(Vla),藤森亮一(Vc)といったNHK交響楽団他の精鋭4名から成る弦楽四重奏団。元々はN響カルテットという名称だったようですが,店村氏の東京都交響楽団特任首席ヴィオラ奏者就任にあたり改名されたとのことです。

私の勝手なイメージかもしれませんが,一流の弦楽四重奏団として名を馳せる団体の演奏と,すでに一流となった演奏家で結成される団体の演奏では,音楽の質が根本から異なるような気がします。この四重奏団は後者に当たると思いますが,全体としての表現はオーソドックスなのですが,個々のプレーヤーの高い技量と強い個性のぶつかり合いによって非常に魅力ある音楽に仕上がっています。これも室内楽の醍醐味ですね。

しかし,この録音は...この素晴らしい演奏の魅力を半分も伝えてくれていないと思います。マイク位置が遠いのか,ホールの響きが被りすぎて明瞭度が落ち,音色が曇り,楽器の質感が失われ,ニュアンスが消えてしまっています。残響が音楽の邪魔をするばかりで,ホールで録音したという雰囲気を感じさせること以外,音楽性にほとんど何も寄与していません。素晴らしい演奏が台無しです。本当にこれは残念でなりません。

マイスター・ミュージックの録音は私には全く合わないようです...

(記2014/08/03 好録音探求より)

COVER PICTURE

アルティ弦楽四重奏団 [Op.131, Op.135]

Alti String Quartet [Op.131, Op.135]

メンバー 豊嶋泰嗣(Vn),矢部達哉(Vn),川本嘉子(Va),上村昇(Vc)
レーベル EXTON
録音データ 2013年9月2-4日 東京・稲城iプラザ
試聴盤 EXTON OVCL-00533 (P)(C)2014 Octavia Records (国内盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★
備考 Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

豊嶋泰嗣,矢部達哉,川本嘉子,上村昇,という錚々たるメンバーの弦楽四重奏団。京都府立府民ホール“アルティ”の開館10周年を記念して1998年に結成されたということですので,もう16年になるとのことですが,これが初めてのディスクということで,まさに満を持してのリリースということになりますでしょうか。しかも初めてのディスクでこの選曲とは,自信満々ですね。

演奏はオーソドックスで堂々としています。小細工なし。無理に個性を出そうとしないしする必要も全くない。充実した見事な演奏に拍手です。ぜひ全集化を! 期待しています。

録音ですが,残響はそれほど多くないのですが,ホールの響きのキャラクターがやや強く乗りすぎているように感じられます。残響音と反射音の取り入れ方がやや中途半端に思われます。その結果,楽器の音色の透明感,質感やニュアンスがやや失われてしまっています。また,楽器間バランスとして第1ヴァイオリンが少し控えめで奥まったように録られていて,少し欲求不満が残ります。中低域は締まっていて良好です。

演奏が素晴らしいだけに,この録音は本当に惜しいと言わざるを得ません。今後の録音ではぜひ改善をお願いしたい。楽器の音色は命なのですから。

しかし,それにしても...なぜアルティで録音しないの???(^^;。

(記2014/08/02 好録音探求より)

COVER PICTURE

カメラータ・ノルディカ [後期] 弦楽合奏版

Camerata Nordica [Late] String Orchestra

レーベル Altara Music
録音データ 2001年~2005年 スウェーデン,ヴィシェルム教会,アルグツルム教会(Op.127)
試聴盤 ALT1024(3) (P)(C)2006 Altara Music (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★☆~★★★★
備考 Tower RecordsHMV Onlineicon (※リマスター再発盤)

指揮者自身の編曲によるコンチェルト・グロッソ・タイプの編曲ということで,弦楽合奏とソロが混じった編曲になっています。第13番の終楽章は大フーガで,Op.130の終楽章は省略されています。

後期の全曲を弦楽合奏で聴けるのがうれしいのですが,一方で,これらの曲を弦楽合奏で本当に出来るの?と,その仕上がりがイメージ出来なかったのですが,聴いてみて,想像をはるかに超える出来映え,アグレッシヴな快演に驚きました。攻める演奏なのにアンサンブルもほとんど乱れませんし,ソロの入れ方も絶妙で聴き応えがありました。これもややキワモノ的で好みがあるでしょうからなかなか人に薦めづらいところですが,ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲が好きなら一度は聴いてみても良いのではないかと思いました。

録音ですが,やや残響過多で弦楽器の音色に精彩がないのが気に入りませんが,とはいえ,それなりに音の厚みと弦楽合奏としての質感は良く,何とかぎりぎり鑑賞には堪えるかなと思います。出来は少しばらつきがあり,Op.130, 133が比較的音に透明感があって良く,Op.135は残響が多すぎてあまり良くありません。

しばらく廃盤のようでしたが,もうすぐBISからリマスター盤として再発売されるようです。リマスター盤,聴いてみたいけど買い直すほどでもないかな...でも気になるなぁ...でも残響が多くて好録音の少ないBISだしなぁ...

(記2013/12/25 好録音探求より)

COVER PICTURE

イザイ四重奏団 [Op.18-3, Op.74, Op.135]

Quatuor Ysaÿe [Op.18-3, Op.74, Op.135]

メンバー ギヨーム・シュートル(Vn),リュク=マリー・アグエラ(Vn),ミゲル・ダ・シルヴァ(Va),ヨハン・マルコヴィッチ(Vc)
レーベル YSAŸE RECORDS
録音データ 2008年3月-4月 パリ,オルセー美術館オーディトリウム
試聴盤 YR510 (P)2008 (C)2012 YSAŸE RECORDS (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★☆
備考 Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

ライヴ録音で演奏後の拍手も収録されています。ライヴならではの気迫のこもった,そして,勢いのあるキレの良い演奏が素晴らしいです。今のところベートーヴェンはこのディスクしかないようなのですが,他の曲も聴いてみたくなります。

録音なのですが,残響はほとんどなく,それぞれの楽器を適度な距離感で明瞭に捉えていて,この点ではすごく良いと思うのですが,なぜか弱音も含めて歪みっぽく締め付けられるような感じがします。リニアリティが悪いのでしょうか,何となく濁っていて音に伸びもなく,この点で印象が悪くなっています。生々しくリアリティのある良い音の捉え方をしているだけに,このオーディオ品質の悪さは残念です。

このシリーズが続くならぜひ録音機材を見直して欲しいと思います。このクオリティではせっかくの素晴らしい演奏がもったいないことになってしまいます。

(記2013/12/23 好録音探求より)

COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE

上海クァルテット [全集]

Shanghai Quartet [Complete]

メンバー Weigang Li(Vn), Yi-Wen Jiang(Vn), Honggang Li(Va), Nicholas Tzavaras(Vc)
レーベル CAMERATA TOKYO
録音データ (1) 2005年11月8日~10日 岩舟町コスモス・ホール(栃木)
(2) 2006年11月11日~13日 草津音楽の森国際コンサートホール(群馬)
(3) 2008年10月8日~10日 草津音楽の森国際コンサートホール(群馬)
(4) 2007年12月4日~6日 花かげホール(山梨)
(5) 2007年2月24日~28日 スタジオ・バウムガルテン(ウィーン)
(6) 2009年11月25日~28日 草津音楽の森国際コンサートホール(群馬),2008年6月9日~13日 スタジオ・バウムガルテン(ウィーン)
試聴盤 (1) CMCD-28111 (P)2005 (C)2006 CAMERATA TOKYO (国内盤)
(2) CMCD-28138 (P)2006 (C)2007 CAMERATA TOKYO (国内盤)
(3) CMCD-28169 (P)2008 (C)2009 CAMERATA TOKYO (国内盤)
(4) CMCD-28159 (P)2007 (C)2008 CAMERATA TOKYO (国内盤)
(5) CMCD-28159 (P)2007 (C)2007 CAMERATA TOKYO (国内盤)
(6) CMCD-20105-6 (P)2008,09 (C)2010 CAMERATA TOKYO (国内盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★
備考 Tower Records (1) (2) (3) (4) (5) (6), Amazon.co.jp (1) (2) (3) (5) (6), HMV Online (1)icon (2)icon (3)icon (4)icon (5)icon (6)icon

どちらかといえば旧来からのオーソドックスなスタイルで,刺激的な特徴のある演奏ではありませんが,引き締まった充実感のある演奏であると言えます。技術的にも上手いですし,アンサンブルも良いと思います。

録音ですが,数年にわたっていろんな会場で録音されていますが,驚くほど統一感があります。残響も取り入れられていますが,楽器音を直接音主体に濃いめに捉えているため,残響はあまり気になりません。残響は音場感にはあまり寄与せずどちらかといえば演出色を強める方に出てしまっているようで,私としてはあまり好ましいとは思わないのですが,なんとか許容範囲です。濃いめに捉えている効果で,ポータブルプレーヤで移動中に聴くようなあまり聴取状態が良くない場合でも十分楽しめました。この点では良い録音と言えると思います。

(記2013/12/21 好録音探求より)

COVER PICTURE

ハーゲン四重奏団 [Op.18-3, Op.18-5, Op.135]

Hagen Quartet

レーベル myrios classics
録音データ Siemens-Villa Berlin(Op.18/3), X.2012 & Deutschlandfunk Kammermusiksaal(Op.18/5 & 135), XI.2012
試聴盤 MYR009 (P)2012 (C)2013 myrios classics (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★
備考 HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

2011年に,彼らの結成30周年記念としてミリオス・レーベルに録音された第8番に続くベートーヴェンの第2弾になります。現代楽器による現代的な演奏としての新境地を示してくれていると思います。彼らのベートーヴェンは期待を裏切りませんねぇ。かなり大胆に表現をしているのですが,感情に走るわけでもなく,情緒に流されるわけでもなく,とても洗練された形で変化に富んだ音楽を創り上げています。従来のベートーヴェンの演奏とは方向性が全く異なります(うまく言い表せなくてすみません...)。

録音ですが,やや残響が多めで,楽器音へのまとわりつきが気になります。演出色もあって私としてはあまり好ましいとは思いませんが,彼らのシャープな演奏はそれなりに捉えていますし,音色の曇りもあまりありませんので,まずまずの録音と言って良いと思います。残響が許容できる方なら問題ないでしょう。

全集化されるのかどうかわかりませんが,今後も進化を遂げつつ録音が続けられることを大いに期待したいと思います。(DGでの録音のように中途半端な感じで終わらないで欲しい...)

(記2013/09/08 好録音探求より)

COVER PICTURE

ハーゲン四重奏団 [Op.59-2]

Hagen Quartet

レーベル myrios classics
録音データ V. & XII. 2010, Siemens-Villa Berlin
試聴盤 MYR006 (P)2010 (C)2011 myrios classics (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★☆
備考 他の収録曲:モーツァルト:弦楽四重奏曲第16番K.428,ヴェーベルン:弦楽四重奏のための5つの楽章作品5,弦楽四重奏のための6つのバガテル作品9
HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

ハーゲン四重奏団結成30周年記念アルバム。これまでずっとドイツ・グラモフォンに録音を残してきましたが, この節目でミリオスというマイナーレーベルを選択したということです。 ジャケット写真を見る限りまだまだ若々しい彼らですが,もうすでに30年ものキャリアを積んだベテランということに改めて驚きを感じています。

さてこのディスクですが,ベートーヴェンは彼ららしい切れ味の鋭いダイナミックな表現が素晴らしい演奏と思いましたが, モーツァルトは残念ながら最後まで聴き通すことが出来ませんでした。とにかく「ため」が多いのです。 そのため,聴いていても心の中で刻むリズムが乱され息苦しくなってくるのです。 これは以前,西山まりえさんのゴルトベルク変奏曲で「まさかゴルトベルク変奏曲を聴いて苦痛を強いられるとは思いもしませんでした。」 と書いたのと全く同じです(→その記事はこちら「CD試聴記 編集日録2008年3月16日」)。 HMV OnlineやAmazon.co.jpでのユーザーの批評を見ても賛否両論ですが, このモーツァルトに関しては残念ながら「否」でした。(ヴェーベルンは守備範囲外なのでコメントを避けておきます(^^;)

ベートーヴェンを聴く限りは彼らの新境地に期待を持てるのですが,モーツァルトを聴くと, いったい彼らはどんな方向に向いて行ってしまうのか心配になってしまいます。新しいチャレンジはどんどんして欲しいのですが, くれぐれも変な方向には行かないでくれと願わずにいられません。

さて録音ですが,少し残響感があり楽器音へのまとわりつきが気になるものの, 彼らのキレの良い演奏をシャープに明瞭に録っていて好感が持てます。 高域の伸びもありヌケも良く音色も自然,優秀録音と言えるかもしれません(優秀録音として雑誌にも取り上げられていました)。 私としては不満がないわけではありませんが,これなら十分に納得できます。

(記2012/01/04 好録音探求より)

COVER PICTURE

ニュー・ミュージック弦楽四重奏団 [Op.14-1, Op.59-3]

New Music String Quartet [Op.14-1, Op.59-3]

メンバー Broadus Erle(Vn I), Matthew Raimondi(Vn II), Walter Trampler(Va), Claus Adam(Vc)
レーベル Bartók Records
録音データ 1950年代前半 North Stonington, Connecticut
試聴盤 BR 1009 Bartok Records (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★
備考 HMV Onlineicon Tower Records

ラズモフスキー第3番の第4楽章にベートーヴェン自身が記した速度記号(Allegro moltoのこと?)を忠実に守った演奏として有名とのことで,終楽章の時間を実測すると5分16秒でした。《ラズモフスキー第3番終楽章 快速ランキング!》で他の演奏と時間を比較していますが,やはりダントツの速さです。このエントリーのコメントで書きましたが,メトロノーム換算すると162くらいになります。十分Allegro moltoと言えそうです。

演奏も立派なもので,この第4楽章もこれだけのスピードを誇りながら,無理矢理速く演奏しているということもなく,乱れも全くなく,完璧に弾ききっています。

録音は1950年代前半のモノラル録音ということで,あまり良くはありません。とはいえ,時代相応でまあ何とか鑑賞は出来ますし,時代を考えると仕方がないかということで。

廃盤になってから久しく,もう入手を諦めていましたが,先日立ち寄ったJEUGIA三条本店のクラシック売り場で発見,すかさず購入しました。売り場が縮小され,数が減っている中で残っていたとは...店頭も時々チェックしなければなりませんね(^^;。

(記2013/08/04 好録音探求より)

COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE

ペーターセン四重奏団 [Op.18-1,2,3,4,6, Op.127, Op.130, Op.131, Op.132, Op.133, Op.135]

Petersen Quartet [Op.18-1,2,3,4,6, Op.127, Op.130, Op.131, Op.132, Op.133, Op.135]

メンバー Conrad Muck(Vn I), Gernot Süßmuth(Vn II), Daniel Bell(Vn II), Friedemann Weigle(Va), Hans-Jakob Eschenburg(Vc), Jonás Krejcí(Vc)
レーベル CAPRICCIO
録音データ 1994年~2002年 Fredenskirche der Stephanus-Stiftung, Berlin-Weissensee / Berlin, Siemensvilla
試聴盤 (1) 10 510 (P)1995 CAPRICCIO (輸入盤) Op.18-1, Op.131
(2) 10 722 (P)1996 CAPRICCIO (輸入盤) Op.18-4, Op.132
(3) 10 851 (P)1999 CAPRICCIO (輸入盤) Op.130, Op.133
(4) 10 886 (P)2000 CAPRICCIO (輸入盤) Op.18-2, Op.18-6, Op.135
(5) 67 007 (P)2002 Delta Music (輸入盤) Op.18-3, Op.127
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★
備考 HMV Online (5)icon, Amazon.co.jp (1) (2) (3) (4) (5), Tower Records (1) (2) (3) (4) (5)

スケールの大きな表現ですが,優れた技術とアンサンブル力で極めて緻密に音楽を構築しています。現代的で洗練されています。これは相当秀でた演奏ですね! 驚きました。後期の充実した演奏もさることながら,前期の生命力溢れる生き生きした演奏も本当に素晴らしいです。

ベートーヴェンの16曲の弦楽四重奏曲のうち10曲が録音されています。残りは第5番と中期の5曲(ラズモフスキー,ハープ,セリオーソ)。今活動されているのかどうか定かではないのですが(多分もう活動していないのでは?),全集としてはもう完成しないのでしょうね。中期が録音されていないのは残念ですが,後期が全曲揃っているだけでも良しとしなければなりません。

録音ですが,やや残響が多めで演出色が気になりますが,楽器の質感の捉え方はまずまず良好で許容範囲です。明瞭感も何とか保たれていますし,高域を含め音の伸びがあり,4つの楽器の充実感ある響きを美しく上手く収めていると思います。好きなタイプの録音とは少し異なりますが,まあいいでしょう(←偉そうに!(^^;)。

(記2013/08/03 好録音探求より)

COVER PICTURE
(a)

COVER PICTURE
(b)

アルバン・ベルク四重奏団 [全集]

Alban Berg Quartet [Complete]

メンバー Gunther Pichler(Vn I), Gerhard Schulz(Vn II), Hatto Beyerle(Va)(Early, Middle), Thomas Kakuska(Va)(Late), Valentin Erben(Vc)
レーベル EMI
録音データ 1978年~1983年 Evangelische Kirche, Seon, Switzerland
試聴盤 (a)CE25-5013~21 東芝EMI株式会社 (国内盤)
(b)7243 5 73606 2 3 (P)(C)1999 EMI Records Ltd. (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★☆(中期)~★★★★(前期・後期)
備考 HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

言わずと知れた同曲の名盤中の名盤,今改めて聴き直して,この演奏の凄さを実感しています。これほどまでにシャープで美しく完成された演奏は他にないですね。特にやはりこの「シャープ」さは飛び抜けています。寸分の狂いもないアンサンブルの精度の高さは本当に見事です。評論家先生の受けは最高によく,玄人(?)の方には少し受けが悪い(という気がしています...)ように思いますが,世界最高峰には違いないと思いますね。

録音ですが,中期があまり良くありません。残響が被って全体に音がくすんでしまっています。それに比べ,1980年代に録音された前期と後期は良好です。若干の音のくすみは感じられるものの,明瞭感もありますし,楽器の質感をまずまず良好に捉えています。中期が良くないのが本当に残念です。

(a)のディスクは定価22,500円もしていました。よく買ったものだと思います。今は1/10以下,2,000円を切る価格で買えるとは!

以下,前期,中期,後期のジャケット写真です。

COVER PICTURE COVER PICTURE COVER PICTURE

(記2013/07/20 好録音探求より)

COVER PICTURE
(a)Calliope

COVER PICTURE
(b)La Dolce Volta

ターリヒ四重奏団 [全集]

Talich Quartet [Complete]

メンバー Petr Messiereur(Vn I), Jan Kvapil(Vn II), Jan Talich Sr(Va), Evzen Rattay(Vc)
レーベル (a)Calliope (b)La Dolce Volta
録音データ 1977年~1981年
試聴盤 (a)CAL 3633.9 (P)1982 Arpège (C)2001 Calliope (輸入盤)
(b)LDV 121.7 (P)1977 Arpège-Calliope (C)2012 La Dolce Volta (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:(a)★★★★ (b)★★★★★
備考 公式Webサイト
(b) HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

何とも言えぬ微笑ましさ,人間的な温かさに包まれたベートーヴェンだと思います。技術的にも上手いのですが,それよりもこの演奏者の人柄がそのまま出たような独特の雰囲気に魅せられます。良いですねぇ。

そしてこの録音ですが,残響はあるのですが,背景にふわっと広がるように控えめであり,直接音主体に極めて明瞭に,そして自然な音色で録られています。やや不自然な感じはあるものの,各楽器の質感もよく感じ取れますし,見通しがいいので絡み合いもよくわかります。残響や付帯音に邪魔されることなく音楽そのものを面白く聴くことが出来ました。

なお,(a)はやや音がくすんでいて冴えないのですが,リマスタリングされた(b)は鮮度が蘇り,これ以上望めないくらいの良好な状態で復活したと思います。(a)はもはや手に入りにくい状態ですが,最近復刻された(b)があれば(a)はもはや必要ないですね。

重複して買ってしまった!と思ったのですが,今回はそれが幸いしました。

(記2013/07/06 好録音探求より)

COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE

ライプツィヒ弦楽四重奏団 [全集]

Leipziger Streichquartett [Complete]

メンバー Andreas Seidel(Vn), Tilman Büning(Vn), Ivo Bauer(Va), Matthias Moosdorf(Vc)
レーベル MDG
録音データ1995年~2006年
試聴盤 MDG 307 0853-2 (P)(C)2000 MDG (輸入盤) Op.18-1, Op.18-4
MDG 307 0855-2 (P)(C)2002 MDG (輸入盤) Op.18-2, Op.18-5
MDG 307 0856-2 (P)(C)2002 MDG (輸入盤) Op.18-3, Op.18-6
MDG 307 0707-2 (P)(C)1996 MDG (輸入盤) Op.59-1, Op.14-1
MDG 307 0857-2 (P)(C)2006 MDG (輸入盤) Op.59-2, Op.95
MDG 307 0852-2 (P)(C)1998 MDG (輸入盤) Op.59-3, Op.74
MDG 307 0854-2 (P)(C)2002 MDG (輸入盤) Op.127, Op.132
MDG 307 0851-2 (P)(C)2007 MDG (輸入盤) Op.130, Op.133
MDG 307 0820-2 (P)(C)1998 MDG (輸入盤) Op.131, Op.135
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★,★★★☆(Op.59-2, Op.95)
備考 公式Webサイト
Op.18-1, Op.18-4 : HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
Op.18-2, Op.18-5 : HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
Op.18-3, Op.18-6 : HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
Op.59-1, Op.14-1 : HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
Op.59-2, Op.95 : HMV OnlineiconTower Records
Op.59-3, Op.74 : HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
Op.127, Op.132 : HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
Op.130, Op.133 : HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
Op.131, Op.135 : HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records

躍動感に満ちた,ダイナミックでスケールの大きな表現が素晴らしいです。胸のすくようなスピード感も良いです。伝統的なスタイルの中で真摯に精一杯の表現を目指しているように思います。正直,そんなに格好良くはないですが(^^;,この一所懸命でひたむきな音楽には心動かされるものがあります。

ほぼ10年にわたって3つ?の場所で録音されていますが,若干のばらつきがあるものの,統一感があり違和感は少ないです。少し残響が多めですが,直接音主体に濃く楽器音を捉えているため,まずまずと言えると思います(作品59-2,作品95だけは残響感がさらに多めで少し落ちます)。

分売で1枚1枚の値段もそんなに安くはないので全集を揃えるのは大変でした...(^^;

(記2013/06/15 好録音探求より)

COVER PICTURE
COVER PICTURE

ベルチャ四重奏団 [全集]

Belcea Quartet [Complete]

レーベル Zig-Zag Territoires
録音データ(Vol.1)Recorded in concert on 3/4 December 2011, 23/25 March & 18/19 May 2012, (Vol.2)3/4 December 2011, 23/25 March & 18/19 May 2012, 13 October & 1/2 December 2012, at the Britten Studio, Snape
試聴盤 (Vol.1)Zig-Zag Territoires ZZT315 (P)(C)2011 (輸入盤)
(Vol.2)Zig-Zag Territoires ZZT321 (P)(C)2012 (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★☆
備考 公式Webサイト
(Vol.1)HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records, (Vol.2)HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

収録曲は,Vol.1がOp.18-1, 2, 4, 6, Op.59-3, Op.95, Op.127, Op.131,の8曲,Vol.2がOp.18-3, 5, Op59-1, 2, Op.74, Op.130, Op.133, Op.132, Op.135,の8曲+大フーガで,これで全集となります。ベルチャ四重奏団は1994年にロンドン王立音楽院在学中の学生によって結成されEMIに多くの録音を残しています。1999年の大阪国際室内楽コンクール,ボルドー国際弦楽四重奏コンクールなどの受賞歴があるとのことです。恥ずかしながら私は名前すら知りませんでした。

最近の若い四重奏団の例に漏れず大変上手いです。キレのよいスマートで現代的な演奏で,アンサンブルの良さも抜群で素晴らしいですね。しかも鋭角的すぎたり変に個性的に走りすぎたりすることもないので,すんなりと受け入れられます。

スタジオでの録音のようですが残響は少し多めに入っています。しかし,あくまで直接音が主体なので明瞭感や音色への影響は少なく,また距離感も適正で,各楽器のニュアンスも聴き取れます。全体として十分に良好で,これなら私もまずまず納得できます。

(記2013/06/09 好録音探求より)

COVER PICTURE
COVER PICTURE

ミロ・クァルテット [作品18, 作品59]

The Miró Quartet [Op.18, Op.59]

メンバー Daniel Ching(Vn), Sandy Yamamoto(Vn)(Op.18), William Fedkenheuer(Vn)(Op.59), John Largess(Va), Joshua Gindele(Vc)
レーベル Vanguard Classics(Op.18), Longhorn Music(Op.59)
録音データ (Op.18) Recorded at the American Academy of Arts + Letters, New York, NY, October 7-22, 2004 (Op.59) Recorded at the Butler School of Music, Jessen Recital Hall, May 13-28, 2012
試聴盤 (Op.18) Vanguard Classics ATM CD 1655 (P)(C)2005 The Miró Quartet (輸入盤)
(Op.59) LHM2012004 (P)(C)2012 Longhorn Music (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★(Op.18), ★★★★☆(Op.59)
備考 公式Webサイト
HMV Online(Op.18icon Op.59icon) Amazon.co.jp(Op.18 Op.59) Tower Records(Op.18

ミロ・クァルテットは1995年の結成で,すでに結成から18年を経ているということで,もう中堅どころのクァルテットなんですね。作品18の録音は2004年,作品59はそれから8年後の2012年ということで,出来るだけベートーヴェンの作曲時に近い年齢で録音したいということらしいです。ということは,作品74,作品95は4年後くらい,後期はおよそ20年後ですか...本当だとすると気の長い話です。

彼らの演奏はキレのよい緻密なアンサンブルが特徴で,現代的で洗練された美しさ,スマートさとダイナミックで力強く,そして歌心も持ち合わせていて,もう隙がありません。作品59の方がより洗練度が上がって,このクァルテットがさらに進化をし続けていることを示していると思います。最近聴いた中でもかなり良い演奏に入ります。

録音ですが,作品18はやや残響が多めで少し音色が曇りがちですが,作品59は残響時間が長いものの,楽器音とは分離されているため,残響の影響は最小で,曇ることもなく自然で伸びの良い音色で聴くことが出来ます。中低域もブーミーにならず締まっていて,たとえば作品59-2の第1楽章など,彼らのキレの良い演奏がさらに際だつ録音になっています。とても気持ちの良いサウンドで,これは当たりと言えましょう。

といういことで,特に作品59は素晴らしい演奏・録音で感動しました。

今の彼らの全集が聴けないのは本当に残念です。それぞれの年齢層,経験値でしか出来ない演奏があるのだから,作曲年にこだわらず全集録音して欲しいものです。

(記2013/04/28 好録音探求より)

COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE

ウィハン四重奏団 [全集]

Wihan Quartet [Complete]

メンバー Leoš Čepický(Vn), Jan Schulmeister(Vn), Jiří Žigmund(Va), Aleš Kaspřík(Vc)
レーベル Nimbus Alliance
録音データ Live recordings in Convent of St Agnes, Prague, October 2007 - March 2008
試聴盤 Nimbus Alliance NI6105 (P)(C)2009 Wyastone Estate (輸入盤)
Nimbus Alliance NI6109 (P)(C)2009 Wyastone Estate (輸入盤)
Nimbus Alliance NI6100 (P)(C)2009 Wyastone Estate (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★
備考 公式Webサイト
Amazon.co.jp(初期 中期 後期), Tower Records(初期 中期 後期

ウィハン四重奏団は1996年から2005年にわたって全集を完成させてきましたが,それから間もない2007年から2008年のライヴを全集として出してきました。ある種の土臭さの残る1回目の全集と比べ,この2回目の全集は随分と垢抜けた感じがします。 ライヴらしい緊張感と高揚感に溢れ,かつビシッと引き締まったスピード感のある意欲的な演奏は聴き応え十分です。技術力もアンサンブルも申し分ありません。土臭さが薄れているのはちょっと残念な気はしますが。

録音ですが,残響が少し多めに入っていますが,直接音が主体で残響の影響が比較的少なく,発音のニュアンスがそこそこ伝わってきて悪くないと思います(もちろん残響はもう少し抑えて欲しかったとは思います)。演奏会の録音なのでやや演奏雑音が大きめに入っています。そんなに気にはならないものの,ギシギシというノイズが大きめで邪魔に感じられるもの(特に作品127)や,ボコボコという低域の雑音が耳障りなものもあります。なお,各曲の終了後の拍手まで収められています。

なお,この全集はCD-Rです。(なのでHMVでは取り扱っていない?)

(記2013/04/28 好録音探求より)

COVER PICTURE

ウィハン四重奏団 [全集]

Wihan Quartet [Complete]

メンバー Leoš Čepický(Vn), Jan Schulmeister(Vn), Jiří Žigmund(Va), Aleš Kaspřík(Vc)
レーベル Lotos
録音データ Recorded at the Domovina Studio, in the years 1996-2005
試聴盤 LOTOS LT 0148-2 130 (P)Lotos (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★☆~★★★★
備考 公式Webサイト Tower Records

ウィハン四重奏団はチェコの団体で,全く名前も聞いたことがありませんでしたが,日本にもたびたび来日している実力のある四重奏団のようです。ちょっと古い世代に属するようなどこか懐かしいスタイルで,現代風に洗練はされていませんが,良く歌い,内声の支えもしっかりしていて,その勢いのある生き生きした音楽が良いです。

録音は約10年にわたって行われており,結構ばらつきがあります。全体に少し響きが勝っていて不明瞭で癖があります。後に録音されているものほど良くなっていて,後期作品は概ね良い方に入っているのでちょっと救われます。

このディスク,入手性があまり良くないのはまあいいとして,値段が高いのがきついです...

彼らは2007年から2008年にかけてのライヴを全集としてNimbusからリリースしているようです(CD-R)。またこれもいつか聴いてみたいと思います。

ヴァイオリンのレオシュ・チェピツキー氏は,バッハ無伴奏ヴァイオリンの録音もあります。

(記2013/04/20 好録音探求より)

COVER PICTURE

クリーヴランド四重奏団 [全集]

Cleveland Quartet [Complete]

メンバー William Preucil(Vn), Peter Salaff(Vn), James Dunham(Va), Paul Katz(Vc)
レーベル TELARC
録音データ 1991-1995年 Mechanics Hall, Worcester, Massachusetts; American Academy and Institute of Arts & Letters, New York City;
試聴盤 CD-80475 (P)(C)2007 TELARC (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★☆~★★★★☆ 愛聴盤
備考 公式Webサイト
HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

明るく明快でわかりやすい音楽が特徴です。刺激的ではありませんが,溌剌として躍動感に溢れ,また,各楽器の音色も甘美で大変魅力があります。アンサンブルも優れています。あまり評価されていない全集かもしれませんが,私はこのどこか温かく親しみのわく音楽がすごく気に入っています。

録音ですが,少しばらつきがあります。録音年や録音場所との相関がいまいちわからないのですが,荒っぽく言うと,中期は今ひとつ良くなく,後期は概ね良好,前期はその中間,という感じです。全体に残響が多めで,中期はそのために明瞭感に劣り,音色もくすみがちです(特にセリオーソが良くないです)。後期は残響があるものの,音色への影響は少なめで,何とか弦楽器の魅力的な音色,質感が保たれています。後期,せめて前期の録音で統一されていれば良かったのですが。

なお,全集といっても,分売されていた8枚のディスクをそのプラケースのまま大きな紙製のケースに入れただけのものです。こういう全集は嵩張って困りますね。 個々のディスクの情報は好録音探求の記事の方に記載しましたのでご参照いただければと思います。

COVER PICTURE COVER PICTURE COVER PICTURE COVER PICTURE COVER PICTURE COVER PICTURE COVER PICTURE COVER PICTURE

(記2013/03/20 好録音探求より)

COVER PICTURE

フェルメール四重奏団 [全集]

Vermeer Quartet [Complete]

メンバー Shmeuel Ashkenasi(Vn I), Pierre Menard(Vn II), Richard Young(Va), Bernhard Zaslav(Va),Marc Johnson(Vc)
レーベル Warner Classics
録音データ Teldec Studio, Berlin, 1983-1987(Late), 1988-1989(Middle); Siemensvilla, Berlin, 1990-1991(Early)
試聴盤 2564 61399-2 (P)1984-1991 Teldec Classics (C)2004 Warner Classics (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★
備考 HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

非常にきっちりとした演奏で,私の気持ちよく聴けるテンポより若干遅いかなという曲が多く,また,ストイックに淡々と演奏されるので,ややインパクトには欠けます。しかし,細部まで,一音一音,神経の行き届いた完璧とも思える仕上がりを見せています。じっくりと聴けば聴くほど味わい深さが増していく素晴らしい演奏です。

録音ですが,長期にわたっているため多少のばらつきがありますが,傾向が似ているため違和感はそれほどありません。全体的には響きを抑え気味にして明瞭に質感良く録られていますが,楽器の音色が響き曇りがちになっている曲もあり,惜しいところです。

(記2013/03/14 好録音探求より)

COVER PICTURE

メロス四重奏団 [全集]

Melos Quartet [Complete]

メンバー Wilhelm Melcher(Vn I), Gerhard Voss(Vn II), Hermann Voss(Va), Peter Buck(Vc)
レーベル Deutche Grammophon
録音データ 1983年6月,7月,9月(前期),1984年2月,7月(中期),1984年12月,1986年5月(後期),バンベルク
試聴盤 UCCG-9627/34(435 5202) (P)2005 Deutche Grammophon (国内盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★☆~★★★★
備考 HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

ある意味ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の理想を極めたと言えるのではないかと思います。頭に思い描くこの曲の姿そのものが現実の音楽として目の前で再現されていきます。活気のある熱い演奏でありながらビシッと引き締まった完璧に統制されたアンサンブルは本当に見事です。

録音ですが,残響が少し多めで,楽器音はそれなりにしっかりと捉えられているものの,音色は曇りがちで質感も少し失われておりすっきりしません。残響を気にしない方なら問題ないレベルかもしれませんが。私としては残念でなりません。

それにしてもこれだけの素晴らしい演奏が現役盤として存在しないのはなぜ?と疑問に思わざるを得ません。もったいないと思います。

(記2013/02/23 好録音探求より)

COVER PICTURE

エンデリオン弦楽四重奏団 [全集]

Endellion Quartet [Complete]

メンバー Andrew Watkinson(Vn I), Ralph de Souza(Vn II), Garfield Jackson(Va), David Waterman(Vc)
レーベル Warner Classics & Jazz
録音データ 2005-2008年; Concert Hall, Wyastone, Monmouth; West Road Concert Hall, Cambridge; Potten Hall, Ipswich;
試聴盤 2564 69471-3 (P)2005,2006,2008 Warner Classics & Jazz (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★☆~★★★★
備考 公式Webサイト
HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

エンデリオン弦楽四重奏団は1979年に結成,30周年を記念して全集を録音したとのこと。第1番の初稿や断章,弦楽五重奏曲,ピアノ・ソナタ作品14-1のベートーヴェン自身による編曲版も含まれます。ジョナサン・デル・マーによるベーレンライター校訂譜による初の全集で,エンデリオン弦楽四重奏団もこの校訂作業に協力しているとのことです。

音楽にどんどんと没入していく意欲的で熱い(しかし,高い技術力でしっかりと制御されている)演奏で,曲想ごとにそれをくっきりと浮き立たせるような表現をしてきます。個人的には拍の頭で溜めず前に前に音楽が転がっていくノリの良さが気に入っています。

録音ですが,録音場所が3カ所に分かれ,時期も3年以上に渡っていてばらつきはあるものの,大まかには統一されていて違和感はありません。やや残響が多く楽器音に被って音色が曇りがちですが,状態の良い曲はぎりぎり許容範囲と言えます(後期は概ね良い方かなと思いました...気のせいかもしれませんが)。

(記2013/02/17 好録音探求より)

COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE

タカーチ四重奏団 [全集]

Takács Quartet [Complete]

メンバー Edward Dusimberre(Vn), Károly Schranz(Vn), Roger Tapping(Va), Andreás Fejér(Vc)
レーベル DECCA
録音データ 初期: St George's, Bristol, 18-22 November 2002, 1-4 September 2003
中期: St George's, Bristol, 16-19 July 2001, 19-22 November 2001
後期: St George's, Bristol, 17-20 November 2003, 17-21 May, 19-23 July 2004
試聴盤 初期: 470 848-2 (P)(C)2004 Decca Music Group (輸入盤)
中期: 470 847-2 (P)(C)2002 Decca Music Group (輸入盤)
後期: 470 849-2 (P)(C)2004 Decca Music Group (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:(初期)★★★★,(中期)★★★★,(後期)★★★★☆
備考 公式Webサイト
HMV Online(初期icon 中期icon 後期icon), Amazon.co.jp(初期 中期 後期), Tower Records(初期 中期 後期

すごくシャープですねぇ。アンサンブルの精度,和音の響きの充実感,どれをとってもずば抜けています。隙がまったくありません。それでいて無機質になることがありません。力強いキレの良いアクセントが全体を引き締め緊張感を維持しつつも,歌心,情緒感にも溢れている。素晴らしい! これは本当に感動しました。現代的演奏の最高峰の一つに挙げても良いんじゃないでしょうか。

録音ですが,やや残響が気になるものの,楽器音の捉え方は良く楽器そのものの充実した音をしっかり収めているので,印象は良好です。中期がやや曇りがちで少し劣るものの,後期はその曇りもかなり緩和され,高域まで伸びていてヌケも悪くありません。楽器の質感も良好です。

(記2013/02/02 好録音探求より)

COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE

コロラド弦楽四重奏団 [全集]

Colorado String Quartets [Complete]

メンバー Julie Rosenfeld(Vn), Deborah Lydia Redding(Vn), Marka Gustavsson(Va), Diane Chaplin(Vc)
レーベル Parnassus
録音データ 初期: Op.18-1 January 28 and August 26, 2008; Op.18-2 August 27-28, 2008; Op.18-3 April 21-22, 2009; Op.18-4 January 27, 2008; Op.18-5 January 25 and 28, 2008; Op.18-6 August 25-26, 2008; in the Sosnoff Theater of the Richard B. Fisher Center for the Performing Arts, Band College, Annandale-on-Hudson, New York.
中期: August 2-4, 2001 at the Royal Hall, Conservatory of Music, SUNY, Purchase, NY
後期: May 26, 2004(Op.95), May 31-June 2, 2005(Op.130/133), December 16-17, 2005(Op.127), May 25-26, 2006(Op.131), May 26-28, 2004(Op.132), June 2 and December 18, 2005(Op.135). All performances recorded in the Sosnoff Theater of the Richard B. Fisher Center for the Performing Arts, Band College, Annandale-on-Hudson, New York.
試聴盤 初期: PARNASSUS PACD 96048/9 (P)(C)2010 Parnassus Records (輸入盤)
中期: PARNASSUS PACD 96034/5 (P)(C)2002 Parnassus Records (輸入盤)
後期: PARNASSUS PACD 96042/4 (P)(C)2008 Parnassus Records (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:(初期)★★★★★,(中期)★★★☆,(後期)★★★★★
備考 公式Webサイト
HMV Online(後期icon), Amazon.co.jp(初期 中期 後期), Tower Records(初期 中期 後期

初期が入手できました。 これで全集になりました。 追加して再レビューします。

コロラド弦楽四重奏団は女性4名で構成され,ニューヨークを拠点に活動されており, 中期は結成20周年,後期は25周年の記念としてこの録音をしたとのことです。 初期はその後に録音されています。

この団体は明るく明快な音楽が持ち味だと思います(音を短めにはっきりと切るところからそう感じるのか?)。 これがベートーヴェンにふさわしいかどうかは人によって感じ方が違うと思いますが, 最初は少し違和感を感じたものの,悪くないと思い始めてきました。 技術的にも,アンサンブルにも不満はありません。 なかなか上手いです。

なお中期・後期は,カバー・ピクチャーにご丁寧にも“Complete performances with all marked repeats”と記載されています。

録音ですが,中期はやや響きが楽器音に被って明瞭感が良くなく,すっきりしません。 初期と後期は多少の残響はあるものの直接音比率が高く,非常に明瞭で音色も自然です。 それぞれの楽器の質感も良く,分離も良いです。 これはかなり良いです。 少しオマケですが五つ星としました。

もし聴かれるなら初期または後期をお薦めします。 録音も良く楽しく聴くことが出来ました。

(記2013/01/11 好録音探求より)

COVER PICTURE

ヴォーチェス四重奏団 [全集]

Voces Quartet [Complete]

レーベル ELECTRECORD
録音データ1998年3月21-28日 ドイツ,ヴュルツブルク,トスカーナザール
試聴盤 EDC 1024-1032 ELECTRECORD (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★☆
備考 HMV Onlineicon Tower Records

ヴォーチェス四重奏団はルーマニアの弦楽四重奏団で,1973年の結成。この弦楽四重奏曲全集は,彼らの結成25周年を記念して行われた全集の連続演奏会のライヴ録音とのことです(拍手入り)。キレの良い演奏というわけではありませんし,ライヴということで無傷ではないのですが,彼らの長い経験の積み重ねを感じさせる味わい深さがあってなかなか良いです。アンコールで大フーガが演奏されたらしく,同曲が2つ収録されています。

録音ですが,残響が多いというわけではないのですが,ホールの響きの癖が強く出ていて音色を損なっています。明瞭感も今ひとつ良くありません。聴き慣れてくるとだんだん気にはならなくなってくるのですが,好録音とは言えません。残念です。

(記2012/12/19 好録音探求より)

COVER PICTURE

アマデウス四重奏団 [全集]

Amadeus Quartets [Complete]

レーベル Deutsche Grammophon
録音データ1959-1963年
試聴盤 DG 423 273-2 (P)1960,1962,1963 Polydor International (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★
備考 HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

モーツァルトの弦楽四重奏曲全集ハイドンの弦楽四重奏曲集が良かったアマデウス四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集。 前記の演奏同様,一所懸命に弾いているところがどこか微笑ましく感じられる独特の情感と味わいを持っています。 このキャラクターはベートーヴェンには合わないのではないかと聴き始めたときは思いましたが,そんなことはありませんでした。 聴いているうちに彼らの世界に引き込まれてしまいます。

録音は1960年前後のものなので,クオリティからいうと残念ながら少しザラザラとした感じで歪みが感じられるのと帯域バランス的に少し崩れていて決して良いとは言えません。 しかし,そこに目をつぶれば,残響を抑えて楽器音をしっかりと捉えた好録音と言えるのではないかと思います。 高域が伸びているとは言いませんが,ヌケは悪くなく聴いていてストレスを感じることはありません。

現代の弦楽四重奏団のようなキレの良い演奏ではありません。 今では顧みられることのほとんどない全集だとは思います。 でも音楽的な魅力は十分に備えています。 お薦めするものではありませんが,彼らのモーツァルトやハイドンが好きな方は楽しめるのではないかと思います(なんちゅう微妙な言い方...(^^;)。

(記2012/07/13 好録音探求より)

COVER PICTURE

ウィーン・ムジークフェライン四重奏団団 [全集]

Vienna Musikverein Quartet [Complete]

レーベル Gakken Platz
録音データ1990/1-1992/4 ショッテンシュティフト・フェストザール,ウィーン
試聴盤 DB1001-1008 (P)2006 GAKKEN-PLATZ (国内盤) ※タワーレコード企画盤
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★☆
備考 Tower RecordsAmazon.co.jp

タワーレコードの企画盤です。

ウィーン・フィルのコンサートマスター,ライナー・キュッヒル氏が率いるウィーン・ムジークフェライン四重奏団による全集。 「ウィーン・フィルの...」というところから,香り高い上品な演奏を想像してしまっていたのですが,その想像は見事に打ち砕かれました(^^;。 アクセントを大胆に効かせた熱い熱いアグレッシブで情感に満ちた演奏に圧倒されました。Tower Recordsの解説にあるとおり, 「生命力みなぎる」という表現があたっていると思います。整ったスマートな昨今の演奏を聴き慣れた耳にはかえって新鮮に聴こえます。

録音ですが,残念ながら残響過多で良くありません。曲にもよりますが,それほど楽器音に被っていないのが救いで, 残響が許容できるなら気にならないかもしれません。ただ,これは銭湯で録音したのか?という曲もあり,これはやっぱりいただけません。 いくらなんでもやり過ぎです。細かい動きやニュアンスがつぶれてしまっています。 もっと楽器から発せられるニュアンス豊かな音を質感よく捉えてほしいものです。

このボックスセットは発売当初に購入しました。その時は6,000円していました。今はその半額で購入できるのですね(涙)。

(記2012/07/11 好録音探求より)

COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE

ジュリアード四重奏団 [全集](分売)

Juilliard Quartet [Complete]

メンバー ロバート・マン(1st Vn),アール・カーリス(2nd Vn),サミュエル・ローズ(Va),ジョエル・クロスニック(Vc)
レーベル Sony Classical
録音データ1982年 ワシントン,アメリカ合衆国 国会図書館 クーリッジ・ホール(ライヴ)
試聴盤 前期:SB3K89895 (C)2002 Sony Music Entertainment (輸入盤)
中期:SB3K89896 (C)2002 Sony Music Entertainment (輸入盤)
後期:SB3K89897 (C)2002 Sony Music Entertainment (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★☆ 愛聴盤
備考 (前期)Amazon.co.jp, (中期)Amazon.co.jp, (後期)Amazon.co.jp

愛聴盤にも関わらず家の中で行方不明になっていました...捜索してやっと引っ張り出してきました(^^;

ジュリアード四重奏団の2回目の全集で,1982年ワシントン国会図書館クーリッジ・ホールでのライヴ録音です。 観客の咳払いも聴こえ,演奏後の拍手も入っている本当のライヴ録音です。 ライヴ録音のため完成度では1回目に劣る,という批評を見かけましたが,確かにそういう面はあるかもしれませんが,私としては全く気になりませんでした。 強い意志の感じられるとともに,ニュアンスが一層豊かになり,引き締まった造形とともに奥行きの深さも備えた素晴らしい演奏だと思います。 1回目の録音とともに,今もって正統派ベートーヴェンの最高峰の演奏の一つと数えられるのではないでしょうか。

そして,やっぱり録音が良いのです。残響はありますが,奥にふわっと広がる程度であり,直接音をほとんど邪魔していません。 各楽器が明瞭に分離良く聴こえ,そして質感もよく感じられます。 ほんのわずかに高域が弱い気がしますが,問題のないレベルです。 そして,ライヴならではのリアリティを伝えてくれる生録的雰囲気を持っているのも良い点です。オーディオ的には評価されないかもしれませんが,これは好録音と言えるでしょう。

1回目の録音と同様,素晴らしい演奏が良好な録音で残されたことに感謝します。

で,何たることか,これも1回目の録音と同じく現在は廃盤で入手が難しいようです。 こんな素晴らしい演奏を廃盤にするとは! (タワーレコードさん,期待していますよ!)

(記2012/07/01 好録音探求より)

COVER PICTURE

ケッケルト四重奏団 [全集]

Koeckert Quartet [Complete]

レーベル Deutsche Grammophon
録音データ 1953-1956年 ハノーファー,ベートーヴェンザール (モノラル録音)
試聴盤 PROC-1192/8 Tower Records Vintage Collection + plus Vol.14 (国内盤) ※タワーレコード企画盤
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★
備考 Tower Records

タワーレコードの企画盤。

解説書によると,ケッケルト四重奏団は,チェコに生まれたドイツのヴァイオリン奏者ルドルフ・ケッケルトによって,当時彼が在籍していたプラハ・ドイツ・フィルハーモニー(バンベルク交響楽団の前身)の楽員をメンバーにして1939年に創設されたチェコ・ドイツ弦楽四重奏団をを母体にしたアンサンブル。ケッケルトは1949年にバイエルン放送交響楽団のコンサートマスターに就任し,当時のメンバーもバイエルン放送交響楽団の団員であったとのことです。

演奏は至極正統的であり,アクセントの効いた躍動感ある,ダイナミックレンジの広い表現が印象的です。技術的にもしっかりしていて隙がありません。今もってしても表現に古びたところは微塵もなく,現代でも遜色なく十分に通用する充実した内容を備えていると思います。

録音ですが,1953-56年のモノラル録音のため,歪み感や帯域バランスの崩れといったクオリティ面においては残念ながら良くないと言わざるをえませんが,音の捉え方はまずまず良く,残響は多少あるものの直接音が主体で明瞭感があり,音のヌケも悪くありません。この中では1955-16年に録音された第1番~第9番,第15番が比較的良好で,それ以前に録音された他の曲は少し落ちます。

タワーレコードは相変わらず良い仕事をしてくれますね。今後の復刻にも期待します。

(記2012/07/01 好録音探求より)

COVER PICTURE

ジュリアード四重奏団 [全集]

Juilliard Quartet [Complete]

メンバー ロバート・マン(1st Vn),イシドア・コーエン(2nd Vn),アール・カーリス(2nd Vn), ラファエル・ヒリアー(Va),サミュエル・ローズ(Va),クラウス・アダム(Vc)
レーベル Sony Classical
録音データ録音 1964-1970年
試聴盤 5095412003 Sony Classical (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★☆ 愛聴盤
備考 HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records

覇気のある素晴らしい演奏! 技術的にも完璧だし躍動的で熱意に溢れています。 こちらまで興奮してきます(特に中期)。近年の多様な演奏からするとスタンダードもスタンダードという印象ですが,それがまた良いのです。 文句なしにお気に入りの全集です。

そしてこの録音の良さ! 残響を抑え,各楽器の音色を極めて明瞭にニュアンス豊かに克明に分離良く伝えてくれます。 古い録音なので音色の癖やきめの細かさ(ざらざら感は少しある)では最近の録音にはかなり劣りますが,そんなことは私にとってはあまり問題ではありません。 愛聴盤であるのはこの録音によるところも大きいです。 ジュリアード四重奏団のベートーヴェンといえばテスタメントから発売されている第14番の録音がこの上なく好きなのですが,印象としてはそれに近いです。 1964年から1970年にかけて録音されたものですが,1970年に録音されたものよりも1960年代に録音されたものの方が良好です。

この素晴らしい演奏が素晴らしい好録音で残されたことに感謝したいです。

で,こともあろうかこのジュリアード四重奏団の全集は廃盤で,全集としては今まともに入手できないようです。こんな人類の貴重な財産とも言える全集を廃盤にするとは! すぐに復刻すべきです。最近ジュリアード四重奏団の演奏が少しずつボックス化されているようなので期待しています。またはタワーレコードの企画盤としてぜひ取り上げて欲しいものです。

ジュリアード四重奏団の全集は2回目のものも持っているのですが,どこか行方不明になってしまいました(涙)。発掘されたらまたレビューしたいと思います。

(記2012/06/21 好録音探求より)

COVER PICTURE

バルトーク四重奏団 [全集]

Bartók Quartet [Complete]

レーベル Hungaroton
録音データ 1969-1972年 Calvinist Church in Toroczko ter, Budapest
試聴盤 HCD 41004 (P)2001 HUNGAROTON RECORDS LTD. (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★☆
備考 HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

まず録音から。1969~1972年の古い録音なので,オーディオ的な品質からするときめの細かさやノイズ感,歪み感では現代の最新録音にはやはり及びません。しかし,残響がわずかに感じられるものの各楽器の音色が明瞭でヌケも良く,大変気持ちよく聴ける好録音でした。私がこのディスクが好きなのは,この録音によるところが大きいです。HUNGAROTONらしい録音と言えるでしょう。

演奏ですが,拍の頭でためることなく前へ前へ進むテンポの良さがまず気に入りました(前のめりに感じられることも)。そして鋭く切り込むようなところであっても歌心を忘れない独特の味というか薫りがあって,音楽が厳しく傾きすぎないところが良いと思います。最近の演奏とは根本的に個性の出方が異なるような気がします。作られた個性ではなく,彼らの音楽的背景そのものというかんじでしょうか。

あんまり聴かれることのない演奏だと思います。演奏も録音も良いので,もっと聴かれても良いのではないかと思うのですが,やっぱりフンガロトンだからですかね...(値段も高いですし...)

(記2012/06/16 好録音探求より)

COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE

レナー弦楽四重奏団 [全集](分売)

Léner String Quartet [Complete]

レーベル 東芝EMI
録音データ 1926年~1938年
試聴盤 (初期)SAN-1551-52,(中期)SAN-1553-55 ,後期:SAN-1556-58 東芝EMI株式会社(新星堂企画盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:評価せず
備考 新星堂のカタログになし(廃盤と思われる)

新星堂の企画盤でSP盤からの復刻です。SP盤の盤質にはかなりばらつきがあり,後期の作品127や作品130はかなり聴き苦しいです。一方でノイズ除去?が上手くいっている曲もあり,作品131などはずっと聴きやすく鑑賞にはほとんど支障がありません。とはいえ,全体としてはやはりSP盤復刻クオリティであり,好録音云々が到底言えるものではありません。

しかし,これが80年も昔の録音かと思うと,このクオリティで残っていることに本当に驚きます。当時のベートーヴェン演奏を垣間見ることができる貴重な記録ですね。意外に今でも全く遜色なく通用するところもありますし,いかにも古臭かったり安定感がなかったりするところもあり,演奏の質もばらつきが大きいように思います。

というようなものなのでお薦めはしませんが,物好きの方がこういうものだとわかって聴く分にはなかなか面白いと思います。

しかし,残念ながらどのセットも新星堂のカタログから消えてしまいました。

(記2012/06/07 好録音探求より)

COVER PICTURE

カルミナ四重奏団 [Op.59-3, Op.132]

Carmina Quartet

メンバー Matthias Enderle(Vn I), Susanne Frank(Vn II), Wendy Champney(Va), Stephan Goerner(Vc)
レーベル DENON
録音データ 1998年6月15-21日 スイス,リーエン,ラントガストホーフ
試聴盤 DENON COCO-70920 (P)2007 COLUMBIA MUSIC ENTERTAINMENT, INC. (国内盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★
備考 公式Webサイト
HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

やっぱりカルミナ四重奏団は上手いですねぇ。でも理知的な整然とした演奏かと思いきや,どちらかといえば熱く激しい演奏でこれは意外でした。第15番でこれだけダイナミックな演奏があっただろうか,と思うくらい表現の限りを尽くしている感があります。すごく良いのですが,第15番の第3楽章だけは,これはちょっと違うとずっと思いながら聴きました。しっとりとした祈るような演奏を期待するからだと思います。ラズモフスキーは終楽章の突進するような演奏に圧倒されました。

録音ですが,少し残響が多めで楽器音に被ってくすみがちです。普通の範囲の録音ではありますが,残念ながら好録音ではないです。演奏が良いだけにこの録音は私としてはすごく残念です。

カルミナ四重奏団はベートーヴェンの全集を録音しないのでしょうか。こんなすごい演奏を聴かされると,否応なく期待がふくらんでしまうのですが...(^^;

(記2012/06/05 好録音探求より)

COVER PICTURE

ブレンターノ弦楽四重奏団 [Op.127, Op.131]

Brentano String Quartet

レーベル aeon
録音データ 24-27/10/2010, Richardson Auditorium, Princeton University.
試聴盤 AECD 1110 (P)(C)2011 aeon (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★
備考 公式Webサイト
HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

ブレンターノ弦楽四重奏団という団体は名前すら聞いたことがありませんでしたが,HMV Onlineの解説によると, 「ブレンターノ弦楽四重奏団といえば、1992年のデビュー早々から破竹の勢いで東海岸のシーンを席巻、 クリーヴランド弦楽四重奏賞をはじめいくつかの賞をさらった...」とかなり以前から活躍している気鋭の四重奏団とのことです。 力強く気合いの入った音楽ながら,全体の印象はスマートでどちらかといえば軽い(悪い意味ではないです), 現代的な演奏という印象を受けました。音楽がくっきりと浮かび上がってきているからかもしれません。

録音ですが,若干残響のまとわりつきが気になりますが,個々の楽器の音は明瞭で印象は悪くありません。 もう少し直接音比率を上げて明瞭度と鮮明さを出して欲しいとは思いますが。惜しいと思います。

演奏が思いのほか良かったので,今後の録音にも期待したいと思います。

(記2012/06/02 好録音探求より)

COVER PICTURE

エマーソン弦楽四重奏団 [全集]

Emerson String Quartet [Complete]

レーベル Deutsche Grammophon
録音データ 1994年1月~1995年4月 ニューヨーク,アメリカ文芸アカデミー
試聴盤 00289 477 8649 (P)(C)1996,1997 Deutsche Grammophon (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★~★★★★☆
備考 公式Webサイト
HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

HMV Onlineのレビューでも述べられているとおり, 鮮烈で現代的な演奏であると思います。個人の技術力もアンサンブルも見事ですし,表現意欲も旺盛で聴き応え十分です。切れ味の鋭さばかりが注目されるきらいがありますが,緩徐楽章の繊細な表現力も素晴らしいものがあります。唯一の(そして結構大きな)不満は重音で弾かれる和音が汚いところが散見されることです。これだけの技術を持っていながらこれはちょっとないだろうと残念に思います。まあ全体の出来からすれば些細なことかもしれません。

録音ですが,ドイツ・グラモフォンらしい残響を抑え気味にした明快ですっきりしたところは好感を持ちます。ですが,もう一歩踏み込んで鮮明さを強調して欲しかったと思います。まあ十分に良い録音ではあると思いますが。

メジャーからマイナーまでいろいろなベートーヴェン弦楽四重奏曲全集を聴いてきましたが, 正直言ってベートーヴェンの全集をリリースできるような団体で下手なところはまずありません。 どれも一定の水準をクリアした良い演奏ばかりと思います。しかし,このエマーソン四重奏団のようなメジャーな団体はやはり一歩抜きん出ています。 技術やアンサンブルの精度が高く優れているのはもちろんですが,個々の楽器が発する音自体の魅力が断然違いますね。 と,この演奏を聴いて今更ながら改めて認識した次第です。エマーソン四重奏団は今まであまり好きではなかったのですが,これはいいと思いました。

(記2012/03/22 好録音探求より)

COVER PICTURE

ヴァンブルー四重奏団 [全集]

The Vanbrugh Quartet [Complete]

レーベル Intim Musik
録音データ Recorded 1996 at Swedish Broadcasting Corp. Gothenburg
試聴盤 IMCD 043-050 (P)(C)2002 Intim Musik AB (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★
備考 公式Webサイト
HMV Onlineicon Tower Records

スウェーデンからの輸入盤ですが,解説書の最後の団体紹介に日本語訳がありました。1988年の国際ポートマス弦楽四重奏コンクールに優勝したとあります。現在はアイルランド南岸のコーク市をベースに活動しているとのことです。解説書では「ヴァンブルー四重奏団」と記載されていますが,「ヴァンヴラ四重奏団」と記載しているサイトもありました。

あまり期待していなかったのですが(じゃあなんで買ったんだ?(^^;),意外に(失礼!)良かったです。力強くまた柔剛の織り交ぜが巧みでよく練られています。技術的にも上手くアンサンブルも優秀です。超一流の団体と肩を並べるところまではいきませんが,それでもこのベートーヴェンは上出来です。

録音ですが,かなり濃く分厚い響きをもって録られています。いささか暑苦しいサウンドでボリューム感がありすぎる気もしますが,この芯の太い音色はこれはこれで悪くありません。しかしやっぱり音色は少し落ちていると思います。個人的にはもっとすっきりと伸びやかな音で録って欲しいとは思います。

(記2012/03/17 好録音探求より)

COVER PICTURE

ミケランジェロ弦楽四重奏団 [Op.18-1, 2]

Michelangelo String Quartet

メンバー ミハエラ・マルティン(Vn I),ステファン・ピカール(Vn II),今井信子(Va),フランス・ヘルマーソン(Vc)
レーベル PANCLASSICS
録音データ 2007年4月 スイス,ラ・ショー・ド・フォン,リュール・ブリュ音楽堂
試聴盤 PC 10198 (P)(C)2008 PANCLASSICS (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★
備考 公式Webサイト
HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

ミケランジェロ弦楽四重奏団はヴィオラの今井信子さんが参加する弦楽四重奏団で2002年結成, ヴァイオリンはミハエラ・マルティン,ステファン・ピカール,チェロはフランス・ヘルマーソンです。 このディスクはベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集に向けての第一弾です。 2012年2月現在,第二弾の第3番~第6番までが発売されています(→HMV Online)。

これはレコード芸術誌2008年度第46回レコード・アカデミー賞の「特別部門 録音」の受賞ディスクです。 2011年度の受賞ディスクが最高に良かったので, 過去の受賞ディスクも聴いてみたくなり,目にとまったのがこのディスクです。

それでその録音なのですが...う~ん,なんでこのディスクが選ばれたんだろう...と正直疑問に思ってしまいました。 明らかに残響が優勢で本来の楽器の音色や質感を損なっているのですが... まあ確かにオーディオ品質面では優秀なのかもしれませんが, 私が残響を嫌っていることを差し引いてもこれはちょっと納得いきませんねぇ。 悪いということはないのですが,こういう録音が年間通しての最優秀として選ばれること自体が非常に残念に思います。

演奏自体はもちろん申し分ありません。それだけにこの録音は残念に思いました。中期・後期がこういう録音でないことを祈ります。

(記2012/02/09 好録音探求より)

COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE

古典四重奏団 [後期](分売)

Quartetto Classico [Late]

メンバー 川原千真(Vn I),花崎淳生(Vn II),三輪真樹(Va),田崎瑞博(Vc)
レーベル ewe records
録音データ Akigawa KIRARA Hall, June 29 & 30, 1999(Op.127), January 19 & 20, 1999(Op.130,133), February 23, 24, 2000(Op.131,135), June 30 & July 1, 1999(Op.132)
試聴盤 (a) ewcc-0012 (P)(C)2000 ewe records (国内盤) Op.127
(b) ewcc-0013 (P)(C)2000 ewe records (国内盤) Op.130, Op.133
(c) ewcc-0014 (P)(C)2000 ewe records (国内盤) Op.131, Op.135
(d) ewcc-0015 (P)(C)1999 ewe records (国内盤) Op.132
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★☆ 愛聴盤
備考 公式Webサイト
HMV Online (a)icon (b)icon (c)icon (d)icon, Amazon.co.jp (a) (b) (c) (d), Tower Records (a) (c) (d)

なんだかとっても優しいベートーヴェンですねぇ。メリハリがあって推進力もある演奏なのですが,それでもなぜか全体に優しい雰囲気を醸し出しているのです。特にヴァイオリンの甘くて美しい音色が独特でこの四重奏団の魅力を決定づけていますし,他のどの四重奏団とも違うスタイルを確立して独自のベートーヴェン像を創り上げていると思います。

録音が良いことも特筆できます。残響はそれなりに取り込まれていますが,オンマイク(といっても距離感は適切)でそれぞれの楽器音を明瞭に捉えています。残響の音色への影響も最小限で質感も良いです。これなら私も納得できます。

次に文句を...(^^;。まず,なんで後期で4枚なの?! しかもフルプライス(これは仕方ないですが)。 カップリングを工夫して3枚に収めて欲しかったです。次にケースの表示。 文字が小さくどのディスクに何が入っているのかパッと見てわかりません。 よく見ているつもりでもなぜか見つからないので焦ってしまって余計に見つからなくなる...最悪の表示です。 モーツァルトのハイドンセットでも解説書が読みづらいと不満を述べましたが, 本当にもうちょっとユーザー視点でちゃんと考えて作って欲しいものです。 なんでこんなことで苦痛を強いられなければならないのかといつも腹立たしく思いながら手に取っています。

(記2012/01/28 好録音探求より)

COVER PICTURE

ゴールドナー弦楽四重奏団 [全集]

Goldner String Quartet [Complete]

レーベル ABC Classics
録音データ 2004年8月9日~9月5日 シドニー・コンセルバトワール内 ヴァーブルゲン・ホール
試聴盤 476 3541 (P)(C)2009 ABC Classics (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★☆
備考 HMV Onlineicon Amazon.co.jp

ゴールドナー弦楽四重奏団はオーストラリアの団体。名前も聞いたことのない四重奏団でしたが怖いもの見たさで聴いてみました(^^;。で,演奏はというと,まだあまり聴き込んではいないのですが,拍子抜けするくらい普通に良いのです。というかむしろすごく上手くて驚きました(失礼...(^^;)。技術的にも安定感が高くアンサンブルも隙がありません。音楽的にもよく練られ充実していて立派に思いました。

録音ですが,ライヴ録音ながらセッション録音のような音作りです。残響が多めでホールの雰囲気が感じられるのは良いのですが,響きが楽器音にまとわりついてやや鬱陶しく感じられ,明瞭感や音色も損なわれているので私としてはあまり好ましいとは思いません。もう少し明瞭にすっきりと録ってほしいところです。

なお,各曲の最後に拍手が入っています。

(記2012/01/09 好録音探求より)

COVER PICTURE

アルテミス四重奏団 [全集]

Artemis Quartet [Complete]

レーベル Virgin Classics
録音データ 1998-2011年
試聴盤 50999 0708582 6 (P)2005-2011 (C)2011 Virgin Classics (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★~★★★★☆
備考 公式Webサイト
HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

最近の若い弦楽四重奏団は,総じて現代的な感性を持ち,技術力にも表現力にも優れ,元気がありますね。 このアルテミス四重奏団もその一つではないかと。

このベートーヴェンも非常に研ぎ澄まされた先鋭で引き締まった演奏で,ときに優しく,ときに激しく, 豊かな感情をほとばしらせながら,しかしどの表現をとっても完璧に絶妙にコントロールされているのです。 しかも奇を衒うようなところは全くなく,王道的な路線の中でこれをやってのけているのでもう見事と言うしかありません。

録音ですが,ラズモフスキー第1番とセリオーソはやや残響が多めで曇りがち,あまり良い印象ではありませんが, それ以外は残響を少し伴っているものの直接音主体に明瞭に,解像感高く捉えていて良好です。 不満がないわけではありませんが,これなら納得できます。

なお,途中で第2ヴァイオリンとヴィオラが交代しています。最初の録音から10年以上経っていますし, 最初の方のストレートな演奏に比べてやはり最近の方が表現力を増した演奏になっているので, 新メンバーで全部録音して欲しいところですが,やっぱり無理ですかね?

で,この全集は長い間かけて1枚ずつ発売され,分売で買い集めてきました(→好録音探求)。 分売で全集を揃えるつもりだったのですが,Op.74が分売未発売のまま全集ボックス化されてしまい, Op.74を聴きたいがためだけにこのボックスセットを購入しました。 それにしてもこれは一枚一枚発売されるごとに買って応援してきたファンをないがしろにする売り方だと思わず怒ってしまいました。

(記2011/10/22 好録音探求より)

COVER PICTURE

ブダペスト弦楽四重奏団 [全集]

Budapest String Quartet [Complete]

メンバー ジョセフ・ロイスマン(Vn I),アレクサンダー・シュナイダー(Vn II),ボリス・クロイト(Va),ミッシャ・シュナイダー(Vc)
レーベル Sony Classical
録音データ 1958-1961年 30th Street Studio, New York City
試聴盤 SICC 828-35 Sony Music Japan (国内盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★☆
備考 HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

ブダペスト四重奏団による3回目の全集で,全てステレオ録音です。最初に断っておきますが,古い録音なのでアナログ録音特有のヒスノイズや歪みなどが結構大きいですし,録音レベルが高すぎて飽和しているようなところもあり,オーディオクオリティは決して良いとは言い難いです。

しかし,直接音主体に明瞭感を確保しつつ,背景にふわっと広がるように絶妙なバランスで残響が取り入れられた,オーディオクオリティのハンデをカバーするのに十分な「好録音」です。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲はいくつか聴きましたが,その中でもかなりの好録音の部類に入ります。音色は残響によって少し色づけされてしまっているものの,高域が曇ることはなくヌケの良さも確保されています。

中では1958年に録音された初期と1961年に録音された後期が特に良いように思いました。中期はすこし音の捉え方が濃くてうるさい感じが若干ありますが,それほど大きな差はありませんでした。

演奏は,現代の技術レベルの高い四重奏団に比べると精度という面でわずかに落ちるきらいはありますが,この時代独特の味を楽しむことが出来ます。「好録音」であることも手伝って,トータルとしてなかなか印象の良い全集でした。

(記2010/08/08 好録音探求より)

COVER PICTURE

ズスケ四重奏団 [全集]

Suske Quartet [Complete]

レーベル Berlin Classics
録音データ 1967年7月, 1968年7月,10月 ベルリン(Op.59),1975年5月~1980年1月 ドレスデン(Op.59以外)
試聴盤 0002742CCC (P)1969-1981 VEB Deutsche Schallplatten Berlin (C)2004 edel CLASSICS (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★☆ 愛聴盤
備考 他の収録曲:弦楽三重奏曲全集
HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

これは本当に素晴らしい全集です! 音楽の歓び,愛情に満ちています。 各奏者の腕前もたいしたものですし,アンサンブルも完璧,実はものすごくキレの良い演奏なのですが, そんな技術力先行のイメージをみじんも感じさせないところがすごいです。 そして,個性を売り物にするようなところも全くなく,このベートーヴェンの弦楽四重奏曲の普遍的な魅力を最大限に表現しようとする姿勢が, さらにこの全集の価値を高めているように思います。

そして録音がこれまた良いのです。 全体に残響が多めに取り入れられているので必ずしも私の好みではありませんが,あくまで直接音主体に適切な距離感で明瞭に捉えているため, 音色も自然で,細やかなニュアンスまできっちりと伝わってきます。 音楽のエッセンスを上手くすくい取った好録音と言えます。 録音は長期に渡っていて多少のばらつきがあるものの,どれもほぼ不満がありません。

この全集は私の持っているものの中で最も気に入っているものの一つです。 もしどれか1セットを選べと言われたら,おそらくこの全集を選ぶでしょう。 スタンダードな全集として間違いなくお薦め出来ます。

(記2010/03/17 好録音探求より)

COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE

アウリン四重奏団 [全集](分売)

Auryn Quartet [Complete]

レーベル TACET
録音データ Recorded 2002-2004 DeutschlandRadio, Funkhaus Köln
試聴盤 Vol.1: TACET 124 (P)(C)2004 TACET (輸入盤) Op.18
Vol.2: TACET 125 (P)(C)2004 TACET (輸入盤) Op.59, Op.74
Vol.3: TACET 126 (P)(C)2004 TACET (輸入盤) Op.95, Op.127, Op.132
Vol.4: TACET 130 (P)(C)2004 TACET (輸入盤) Op.130, Op.131, Op.133, Op.135
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★
備考 公式Webサイト
HMV Online(Vol.1icon Vol.2icon Vol.3icon Vol.4icon), Amazon.co.jp(Vol.1 Vol.2 Vol.3 Vol.4)

アウリン四重奏団のこの演奏は技術的にも優れていますし,さらにパッションが感じられるのも良いですね。それぞれのメンバーの個性をうまく活かしつつまとまりのあるアンサンブルを形作っていることにも感心します。勢いがあって活き活きしていて楽しく,また心から音楽を楽しむ姿勢が微笑ましくいです。

録音はTACETらしく残響を活かした録り方で,楽器の音色,明瞭感に影響してしまっているのが不満ですが,直接音成分もそれなりにしっかりしていて質感は何とか保たれているので,悪い印象よりは良い印象の方が勝っています。納得はしませんが,まあ十分我慢の範囲に入ります。録音としての統一感もあります。私のように変にこだわらなければ良い録音の部類に入ると思います。

とても素晴らしい全集でした。

(記2010/03/12 好録音探求より)

COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE

オライオン弦楽四重奏団 [全集](分売)

Orion String Quartet [Complete]

レーベル KOCH International Classics
録音データ 前期:December 2007 & January 2008 at LeFrak Concert Hall, Queens College, New York 中期:LeFrak Concert Hall, Queens College, Flushing, New York 後期:June 2006 - November 2007 at LeFrak Concert Hall, Queens College, Flushing, New York
試聴盤 前期:KIC-CD-7682 (P)(C)2009 E1 Music (輸入盤)
中期:KIC-CD-7681 (P)(C)2007 KOCH International Classics (輸入盤)
後期:KIC-CD-7683 (P)(C)2008 KOCH Entertainment LP (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★★ 愛聴盤
備考 公式Webサイト
前期:HMV Onlineicon Amazon.co.jp 中期:HMV Onlineicon Amazon.co.jp
後期:HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

オライオン四重奏団はアメリカの団体。ヴァイオリンの2人は兄弟で,曲によって1stと2ndが入れ替わります。大フーガOp.133はOp.130のCavatinaとFinaleの間に挿入されています。

演奏はストレートで癖がなく,ダイナミックで推進力があります。アンサンブルも見事,技術的にも相当優れていると思います。深みのある表現ではないかもしれませんが,この引き締まった活力みなぎる音楽はとても魅力的です。ラズモフスキー第三番の終楽章など,思わず手に汗握って興奮してしまいました(^^;

でまた録音もなかなか良好です。わずかに響きを伴いつつも直接音主体にクリアに自然な音色で楽器音を捉えています。すっきりとしていて見通しもまずまずです。これならほぼ不満は感じず音楽に集中できます。 ちょっとおまけの感はありますが,全て五つ星としました。

演奏も録音も良く,これは<当たり>でした。弦楽四重奏に限らずクラシックの録音では,この録音のような「すっきり感」のあるものが少ないのは残念なことです。

全集として最も好きなセットの一つとなり,めでたく[愛聴盤]の仲間入りをしました。

(記2010/02/24 好録音探求より)

COVER PICTURE

ジュリアード四重奏団 [Op.131]

Juilliard Quartet

メンバー ロバート・マン(1st Vn),イシドア・コーエン(2nd Vn), ラファエル・ヒリアー(Va),クラウス・アダム(Vc)
レーベル TESTAMENT
録音データ28.III.1960; 1 & 4.IV.1960, RCA Studio B, New York City
試聴盤 SBT 1373 (P)(C)2005 TESTAMENT (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★★ 愛聴盤
備考 他の収録曲:シューベルト:弦楽四重奏曲第十四番 ニ短調 D.810 「死と乙女」
HMV Onlineicon Amazon.co.jp Tower Records

ジュリアード弦楽四重奏団が1960年前後に一時期RCAに移籍していた頃の録音ということで,同レーベルから4枚ほど発売されており, これはその中の1枚です。 1960年 RCAスタジオBでの録音とのことです。 なお,ここで触れるのはベートーヴェンの方の録音です。

このCDは以前,拙Webサイトの“編集日録 2005年10月5日”で紹介したものです。演奏ももちろん良いのですが,とにかく録音が素晴らしい!! 今改めて聴いてみて私の“好録音”に対する考え方を如実に示す好例であると思い,ここに再び取り上げます。

この録音は1960年のものということで,初期のステレオ録音に属すると思います。 当然ながら現代の録音に比べれば,オーディオ品質で劣る面があるということは否めません。 また,マスターテープの保存上の問題か,部分的に音質劣化が見られたり,テープの再生ノイズにムラが感じられるところもあります。 正直言って古くさい音です。オーディオ品質の観点では「良い録音」とは言えないです。ただ,周波数帯域,ノイズレベル,歪み感など, 鑑賞上の障害にならない最低限のレベルはクリアしていると思います。 高域のヌケの良さなどは現代の録音と比べても遜色ありません。

この録音の特徴は,残響がほとんどないというところと,まるで生録のような実在感のある音の捉え方にあります。 RCAのスタジオで録音されたものということで,音楽の録音環境としてはかなりデッドな空間で録音されたものと想像します。 強奏の後の無音部でかすかにスタジオの響きが感じられる程度で,楽器音そのものに影響を与える残響は皆無です。 適度な距離に設置されたマイクで直接音だけねらって収録する,そんな録音の仕方です。 その録音された音は,コンサートホールや教会で録音されたものとは全く異質です。

下の写真は解説書に載っていた録音風景で,これがそのスタジオかどうかはわかりませんが,おそらくこのような環境であったのでしょう。

それで,この録音のどういうところが好きなのか。 それは,演奏者が楽器に託して発する音の全てが聴こえてくる(ような気がする)ところです。 何も足されることなく,そして,何も引かれることなく,ありのままストレートに伝わってくる, 素顔のままというか,素肌の肌触りというか,良いところも悪いところも全て感じ取れそうな質感, そして,自宅のリスニングルームで,間近で演奏を聴かせてもらっているような,そんな妙なリアルさ,親密感がたまらなく好きなのです。 私が持っている弦楽四重奏曲のディスクの中でも,録音が最も好きなものの一つに挙げられます。

私の考える“好録音”は,音がマイクに入るまでが勝負だということをつくづく感じます。

(記2010/01/23 好録音探求より)

COVER PICTURE
COVER PICTURE
COVER PICTURE

ファイン・アーツ四重奏団 [全集](分売)

The Fine Arts Quartet [Complete]

メンバー Leonard Sorkin (Vn I), Abram Loft (Vn II), Irving Ilmer (Va), George Sopkin (Vc)
レーベル Everest Record
録音データ1959-1966(公式Webサイトのディスコグラフィより)
試聴盤 前期:Everest EVC 9051/52 (P)1969/1996 Everest Record Group, Inc. (輸入盤)
中期:Everest EVC 9053/55 (P)1969/1996 Everest Record Group, Inc. (輸入盤)
後期:Everest EVC 9056/58 (P)1969/1996 Everest Record Group, Inc. (輸入盤)
演奏・録音演奏: 好録音度:★★★★
備考 公式Webサイト

ファイン・アーツ四重奏団はたまたまこのベートーヴェンの全集を見つけるまで全く知りませんでしたが, 歴史あるアメリカの四重奏団のようで(設立は1946年!),録音もたくさんあるようです。

締めるところは締める,歌うところは歌う,アンサンブルも優秀,品格も感じられます。 スタンダードと言ってもいいくらい至極真っ当な好演奏でした。これは掘り出し物でした。

古い録音なのでヒスノイズがやや多めで,マスターテープに問題がある部分も多少あるのが残念ですが, それに目をつぶれば,直接音主体の明瞭感と音色の自然さが確保された好録音度の高い録音でした。 残響もそれなりに取り込まれてはいますが,直接音比率が高めなのでほとんど気になりません。

上記のCDは現役盤ではないようですが,amazon.comのマーケットプレイスから中古盤が入手できます(→amazon.com 前期中期後期)(私もamazon.comから入手しました)。

HMV Onlineで検索するとフランスのLyrinxレーベルの前期が見つかるのですが,これはTobu Tradingのカタログによると2005年の録音ということですので,別物のようです(→HMV Onlineicon)。

(記2009/09/07 好録音探求より)